
- 寸法
- 92 × 73 cm
- 技法・素材
- キャンバスに油彩、テンペラ
- 所蔵
- ポンピドゥー・センター(フランス国立近代美術館)
Ausgleichrosa
1933年
✦ 見どころ(技法・色彩)
茶色や黄土色といった重厚な大地の色彩を背景に、中央には鮮烈なピンクや深紅、淡いラベンダー色が迷宮のように配置されています。黒い太い輪郭線が形を冷徹に区切り、一部の長方形には精密な平行線が刻まれて微細なリズムを生んでいます。キャンバスの織り目が透けるほど薄く平坦に塗られた絵の具には、特定の影がありません。バウハウスの幾何学と、パリで開花する平面構成が見事に統合された傑作です。
✦ この絵の舞台
この絵に具体的な風景や物理的な場所は描かれていません。画面に広がるのは、画家が心の中に構築した精神的な空間です。1933年、ナチスの台頭によってバウハウスが閉鎖され、カンディンスキーはドイツからフランスへの亡命を余儀なくされました。暴力と混沌に支配された現実世界に対し、彼はキャンバスの上に完全なる「ピンクの秩序」を立ち上げることで、失われた平穏を精神的に補償しようとしたのです。
✦ 時代背景
1933年は、ヨーロッパの近代史において決定的な断絶の年でした。1月にドイツでヒトラー政権が誕生すると、前衛芸術は「退廃芸術」として激しい弾圧を受けます。カンディンスキーが教鞭を執っていたバウハウスもナチスの突撃隊によって閉鎖され、多くの芸術家が公職を追放されました。ドイツでの制作を封じられた彼は、この年の12月にベルリンを離れ、パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌへと命からがら亡命しました。

おすすめの絵画
ほかの画家
内容に誤りがある場合は こちらからご報告ください
このサイトは reCAPTCHA によって保護されており、Google のプライバシーポリシーと利用規約が適用されます。






















