
物語や輪郭線に依存する伝統的な絵画から脱却し、絶えず移り変わる光の反射や大気の振動を、純粋な色彩の並置によってキャンバスに記録した画家。
Life生涯
1855年から1856年頃、15歳前後のクロード・モネはル・アーヴルで、対象の特徴を誇張して描く風刺画を制作していた。1点10から20フランで販売された線描画は評判を呼び、風景画家のウジェーヌ・ブーダンの目に留まる。彼の誘いで戸外制作(プレネール)に同行したモネは、刻一刻と変化する自然の光に衝撃を受け、風景画への関心を深めていった。
1860年代半ばから、彼は戸外での光の観察を本格化させる。1865年にはフォンテーヌブローの森で、木漏れ日が人物の衣服に与える影響を検証する『バジールとカミーユ』を描いた。しかし私生活では極度の困窮に直面する。1867年、恋人カミーユとの間に長男ジャンが誕生するが、父アドルフから関係の清算を求められ仕送りを打ち切られた。1868年には滞在先の旅館を追い出され、セーヌ川で自殺未遂を起こしている。
1870年にカミーユと結婚し、普仏戦争とパリ・コミューンの混乱を避けてロンドンやオランダへ逃れた後、1871年末からパリ近郊のアルジャントゥイユに居住する。この地で彼は、セーヌ川のヨットや新設された鉄橋など、近代化する郊外の風景を記録した。1873年にはセーヌ川に浮かぶ舟を購入してアトリエ舟とし、水面から光の反射を観察する。1874年には第1回印象派展を開催し、混色を避けた絵の具のタッチを並べて光の振動を表現する手法を展開した。1877年にはパリのサン=ラザール駅で、ガラス屋根の下に立ち込める蒸気機関車の煙と光の交錯を12点の連作として描いている。
1878年、パトロンのエルネスト・オシュデが破産し、モネはオシュデの妻アリスと6人の子供たちを含む12人の大家族でヴェトゥイユへ移住する。1879年9月に妻カミーユが32歳で死去すると、彼は悪天候も重なり室内にこもり、リンゴやブドウを描く静物画を制作した。1880年には第5回印象派展への参加を見送り、保守的な官展であるサロンへ応募して『ラヴァクールのセーヌ川』を入選させる。この時期から、彼は戸外で描き始めたキャンバスをアトリエに持ち帰り、絵の具の層を重ねて再構築する手法を取り入れ始める。
1880年代に入ると、彼の関心は都市の近代風景から、人間の干渉を受けない自然のダイナミズムへと移行する。1882年にはノルマンディーのプールヴィルで、人物を排した断崖と海だけの風景を描いた。1884年には地中海沿岸のボルディゲラに約3ヶ月滞在し、強烈な太陽光とエキゾチックな植生を高彩度な色彩で表現する。1885年にはエトルタの海岸で、1886年には孤島ベル=イルで、大西洋の荒波と岩肌の対比を暗い色調と厚塗りの絵の具で記録した。1895年の冬にはノルウェーのサンドヴィカへ赴き、氷点下の猛吹雪の中でそりにキャンバスを載せて雪景色を描いている。
1890年代以降、彼は同じ場所で時間や天候による光の変化を追いかける連作に注力する。1899年から1901年の冬にかけてはロンドンに滞在し、サヴォイ・ホテルの客室からテムズ川に架かる橋と工業用のスモッグが混ざり合う大気を観察した。現場で描き始めた約100点のキャンバスは、ジヴェルニーのアトリエで数年をかけて加筆され、1903年や1904年に完成を見ている。
1893年に敷地内の土地を追加取得し、既存の小さな池を拡張して日本風の太鼓橋を架けた人工庭園の造営に着手した。1906年に制作された『睡蓮』では、地平線や空といった従来の風景画の基準となる線を画面から排除している。ほぼ正方形のキャンバスには、水面に浮かぶ睡蓮の葉と、そこに反射する空や柳の影だけが、何層にも塗り重ねられた絵の具によって定着されている。
Timeline 年表
1855
ル・アーヴルで対象の特徴を誇張して描く風刺画を制作
1864
フレデリック・バジールとオンフールへ制作旅行
1865
フォンテーヌブローの森で『バジールとカミーユ』を制作
1867
恋人カミーユとの間に長男ジャンが誕生
1868
滞在先の旅館を追い出され、セーヌ川で自殺未遂
1870
カミーユと結婚
1871
パリ近郊のアルジャントゥイユに居住
1873
セーヌ川に浮かぶ舟を購入してアトリエ舟とする
1874
仲間たちと第1回印象派展を開催
1878
12人の大家族でヴェトゥイユへ移住
1879
妻カミーユが32歳で死去
1880
第5回印象派展への参加を見送り、サロンへ応募
1884
地中海沿岸のボルディゲラに滞在
1893
既存の小さな池を拡張して人工庭園の造営に着手
1899
ロンドンに滞在しテムズ川連作に着手
Works 作品

キクイモの花
Jerusalem Artichoke Flowers

ウォータールー橋、曇り日
Waterloo Bridge,Gray Day
Premium ヴェトゥイユ
Vétheuil

ラヴァクールのセーヌ川
The Seine at Lavacourt

ロンドンの国会議事堂
The Houses of Parliament,Sunset

オンフールの海岸
The Beach at Honfleur

ジヴェルニーの芸術家の庭
The Artist’s Garden in Giverny

サンドヴィカ、ノルウェー
Sandvika, Norway

ポルト=ドモワ、ベル=イル
Port-Domois, Belle-Isle
Premium プールヴィルの干潮、ディエップ近郊、1882年
Low Tide at Pourville, near Dieppe, 1882

リンゴとブドウ
Apples and Grapes
Premium 睡蓮
Water Lilies

ヴァレ・ブオナ、ボルディゲーラ近郊
Valle Buona, Near Bordighera
Premium アルジャントゥイユの遊歩道と鉄橋
The Promenade with the Railroad Bridge, Argenteuil

船の出港、エトルタ
The Departure of the Boats, Étretat

アルジャントゥイユの画家の庭(ダリアの庭の一角)
The Artist’s Garden in Argenteuil (A Corner of the Garden with Dahlias)

積みわら
Stack of Wheat

サント=アドレス
Sainte-Adresse

コクリコの野(ジヴェルニー)
Poppy Field (Giverny)

ロンドンの国会議事堂
Houses of Parliament, London

ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ
Waterloo Bridge,London at Sunset

海の景色
View over the Sea

柳
The Willows
Premium ポン・ヌフ
The Pont Neuf

アルジャントゥイユの橋
The Bridge at Argenteuil

ヴェトゥイユの芸術家の庭
The Artist’s Garden at Vétheuil

セーヌ川の船舶、ルーアン
Ships Riding on the Seine at Rouen
Premium ポルト=ドモワの岩肌、ベル=イル
Rocks at Belle-Isle, Port-Domois
Premium セーヌ河畔、ベンヌクール
On the Bank of the Seine, Bennecourt
Premium アンティーブの庭師の家
Gardener’s House at Antibes
Stories 名画と名曲の物語

印象派
モネはなぜ、同じ風景を何枚も描いたのか

Premium 印象派水水面
『キャンバスと鍵盤が見つめた、同じ水の美しさ』ドビュッシーのピアノ曲「水の反映」

Premium 印象派水水面フランス近代音楽
ラヴェルの『新しすぎた、水の音』

Premium 印象派
『悲しみを知る人が作った、世界一美しい光』ドビュッシーの傑作「月の光」

Premium 印象派海ジャポニスム




