Trois ovales 3つの楕円
1942年

- 寸法
- 49 x 48.7 cm
- 技法・素材
- 木製ボードに油彩およびテンペラ
- 所蔵
- 日本の個人蔵
✦ 見どころ(技法・色彩)
キャンバスの代わりに木製ボードを使用し、油彩とテンペラを組み合わせて描かれています。既製品の絵の具を信用せず、自ら粉末顔料を乳鉢で擦り、膠や油と調合しました。水性テンペラのマットで不透明な質感と、油彩の光沢が絶妙に共存しています。かつての強い原色ではなく、手作りのパステル調のニュアンスカラーが用いられ、光の当たる角度によって表情を変える繊細な色彩が魅力です。
✦ この絵の舞台
本作に特定の現実の風景は描かれていません。舞台となっているのは、戦争の悲惨な現実から完全に切り離された「非時空のユートピア」です。深いネイビーブルーの宇宙的な空間に、白い線で描かれた棚のような構造物が浮かび、その上に3つの楕円が配置されています。楕円の中にはアメーバや微生物のような生命体が息づき、中央にはタペストリーのような繊細なグリッドが織り込まれています。
✦ 時代背景
1942年10月、第二次世界大戦下のパリはナチス・ドイツの占領下にありました。カンディンスキーの美術理論は検閲で危険視され、画材の輸入も停止。ヌイイ=シュル=セーヌのアトリエにはキャンバスもチューブ絵の具もほとんど残っていませんでした。物資の絶対的欠乏と孤立という過酷な状況下で、彼は手元にあるわずかな素材を駆使し、精神的な自由を絵画の中に構築しようとしました。

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