Ena and Betty, daughters of Asher and Mrs. Wertheimer
寸法
185.4 × 130.8 cm
技法・素材
キャンバスに油彩
所蔵
テート・ブリテン

Ena and Betty, daughters of Asher and Mrs. Wertheimer

1901年

肖像画

アメリカ人の両親のもとイタリアで生を受け、パリで若年期を過ごしたのちロンドンを拠点に活躍した画家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

ア・ラ・プリマ(濡れ描き)と呼ばれる大胆な筆触が見どころです。エナが着る深紅のベルベットと、ベティが着る白いシルク・ダマスク。異なる布地が反射する光の違いを、絵の具の質感で見事に描き分けています。

✦ この絵の舞台

ロンドンのコノート・プレイス8番地にあったヴェルトハイマー家の邸宅内部。画面右側には、父アッシャーがビジネスで扱っていた最高級の東洋磁器の巨大な壺が置かれています。背景には暗い色の漆器や東洋の屏風のような調度品が配され、姉妹の存在感を際立たせています。

✦ 時代背景

19世紀末から20世紀初頭のイギリス。新興のユダヤ系富裕層が社会的なステータスを確立しようとしていた時代です。一方で、保守的なエスタブリッシュメント層との間には新旧の階級摩擦が存在し、反ユダヤ主義的な偏見も根強く残っていました。

✦ 鑑賞のための問い

二人の視線の先には、誰がいるのでしょうか?

暗い部屋の中、二人の女性が寄り添って立っています。
左の女性は深紅のドレスを着て、黒髪に赤い花を飾っている。
右の女性は白いドレスに身を包み、優しく微笑んでいます。

姉妹の親密な絆。
若々しい肌と、溢れんばかりの活発な笑顔。
伝統的な肖像画の型を破るような、自由で温かな空気が漂っています。
画家とモデルの間に、深い信頼関係があったことがうかがえます。

でも実は。
この美しい姉妹の肖像画は、のちにイギリス社会から激しい憎悪を向けられることになります。
「特別な『恐怖の部屋』にでも隔離すべきだ」
歴史家から、そんな言葉まで投げつけられました。

描かれているのは、長女のエナと次女のベティ。
ロンドンの超一流美術商、アッシャー・ヴェルトハイマーの娘たちです。
1898年、アッシャーは銀婚式を記念して、画家のジョン・シンガー・サージェントに肖像画を依頼しました。
これを皮切りに、ヴェルトハイマー家は合計12点もの家族の肖像画を彼に委託します。
単一のクライアントからの依頼としては、彼のキャリアで最大のシリーズでした。

サージェントは、一家ととても親しい関係でした。
ロンドンのコノート・プレイス8番地にある彼らの邸宅。
サージェントはそこを頻繁に訪れ、ディナーを共にしました。
ダイニングルームの壁には、彼が描いた家族の肖像画が8枚も並んでいた。
彼は愛着を込めて、そこを「サージェントの食堂」と呼んでいました。

エナとベティは、最先端の美術教育機関であるスレード美術学校で学んでいました。
高い自立心を持つ、知的な女性たち。
エナは特にユーモアのセンスに溢れていました。
サージェントが彼女を描いた別の絵でのこと。
他のモデルから男物の帽子とケープを拝借し、風に吹かれるポーズをとっています。
画家との間に、飾らない友情があったことがわかります。

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