Ellen Terry as Lady Macbeth
寸法
221.0 × 114.3 cm
技法・素材
キャンバスに油彩
所蔵
テート・ブリテン(ロンドン)

Ellen Terry as Lady Macbeth

1889年

シェイクスピア

アメリカ人の両親のもとイタリアで生を受け、パリで若年期を過ごしたのちロンドンを拠点に活躍した画家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

タマムシの翅が発光する青から緑の光沢を、鋭い絵の具の重なりでキャンバス上に再構成しています。金色の紐で編み込まれた赤髪のウィッグ、タマムシ色に輝くドレスの緑、赤いグリフィンが手刺繍されたヘザー色のベルベットの外套が、凄まじい色彩コントラストを生んでいます。

✦ この絵の舞台

古代スコットランドの重苦しい石造りの城塞の内部を思わせる暗鬱な影が描かれています。劇中の具体的な特定の場ではなく、サージェントが自ら考案した劇的な架空のポーズをとるための視覚的な舞台装置として機能しています。

✦ 時代背景

1888年、ロンドンのライセウム劇場でヘンリー・アーヴィング演出による『マクベス』の新演出舞台が幕を開けました。当時、ヴィクトリア朝の淑女の規範としてコルセットの着用が求められていましたが、エレン・テリーらはこれを拒絶し、自然な身体の解放を選択しました。

✦ 鑑賞のための問い

あなたがこの王冠を手にしたら、誰の頭上に掲げたいですか?

暗鬱な石造りの城塞のような背景。

赤い髪の女性が、王冠を両手で頭上に掲げています。

彼女が身にまとう緑色のドレスは、異界的なオーラを放って足元まで垂れ下がっています。

シェイクスピアの悲劇『マクベス』のクライマックス。

マクベス夫人が狂気と野望に満ちて自ら戴冠する劇中の名シーンを、そのままキャンバスに写し取ったかのように見えます。

でも実は、これは劇中の特定の場面ではありません。

サージェントが自ら考案した、架空のポーズなのです。

1888年12月29日。

ロンドンのライセウム劇場で、『マクベス』の新演出舞台が幕を開けました。

初日を鑑賞したサージェントは、エレン・テリー演じるマクベス夫人の怪奇な美しさに圧倒されます。

ほぼ初日と同時に、彼女をモデルに肖像画を描くことを決意しました。

この圧倒的な存在感を生み出しているのは、彼女がまとう衣装です。

デザインしたのはアリス・コモンズ・カー。

やわらかいグリーンのウールとブルーのティンセル糸で編まれました。

表面には、本物のタマムシの翅が1,000枚以上も手作業で縫い付けられていました。

蛇の鱗のような妖艶な輝き。

演出家のヘンリー・アーヴィングは、テリーに要求しました。

ヴィクトリア朝の淑女の規範である、コルセットの着用を。

きっぱりと拒絶した。

テリーとカーが選んだのは、コルセットのない自然な身体の解放でした。

劇作家のオスカー・ワイルドは、ロンドンのタイト・ストリートで信じがたい光景を目撃しています。

雨の降るわびしい朝。

テリーがフルメイク、フル装備のマクベス夫人の衣装のまま、四輪馬車に乗ってサージェントのスタジオへ向かっていたのです。

ワイルドは魅了されました。

「マクベス夫人が正装のまま四輪馬車に堂々と乗っている幻影を授けてくれたこのストリートは、二度と他の退屈なストリートと同じになることはない」

彼はまた、衣装の非現実的な豪奢さをこう評しています。

「彼女自身は買い物のすべてを遠くビザンツ帝国で行っているようだ」

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