Portrait of Charlotte Cram シャルロット・クラムの肖像

1900年

肖像画
Portrait of Charlotte Cram
寸法
88.3 × 61 cm
技法・素材
キャンバスに油彩
所蔵
セントルイス美術館

アメリカ人の両親のもとイタリアで生を受け、パリで若年期を過ごしたのちロンドンを拠点に活躍した画家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

下描きなしで直接色を置く「ア・ラ・プリマ」の技法が使われています。白いタフタのドレスや黄色のリボンは、流麗でダイナミックな筆さばきで一気に描かれ、布地の光沢を表現しています。暗いワインレッドの背景が、少女の白い肌と茶色い瞳を鮮やかに際立たせています。

✦ この絵の舞台

この絵の舞台は、ロンドンのチェルシー区タイト・ストリートにあるサージェントのアトリエです。少女が座っているのは、18世紀のレジャンシー様式を模した、精緻な彫刻と金箔が施された豪華な木製の椅子です。大人用の豪奢な調度品と小さな子供という対比が、空間に独特の緊張感をもたらしています。

✦ 時代背景

1900年という制作年は、英米社会における「ギルデッド・エイジ(金メッキ時代)」の成熟期にあたります。急速な産業化で莫大な富を得た新興富裕層が、自らの社会的地位や文化的な洗練を誇示するため、格式高い肖像画をこぞって依頼した時代でした。

✦ 鑑賞のための問い

あなたがこの少女の前に立っていたら、彼女はどんな言葉をかけてくると思いますか?

豪華な金箔が施された、巨大な木製の椅子。
そこに、白いドレスを着た少女が深々と座っています。
腰には、鮮やかな黄色の大きなリボン。
体を少しひねり、まっすぐにこちらを見つめています。

彼女の名前は、シャルロット・クラム。
1900年に描かれたこの作品は、裕福で幸せな少女の姿を伝えているように見えます。
当時、莫大な富を得た新興富裕層は、自らの地位を示すためにこぞって画家に肖像画を依頼しました。
彼女もまた、そんな恵まれた一族の令嬢として描かれたのでしょう。

でも実は、彼女は両親の顔を知りません。
この絵が描かれたとき、彼女はすでに孤児でした。

1893年、ロンドン。
シャルロットが生まれたわずか5日後、母親はこの世を去りました。
悲劇はそれだけではありません。
彼女が2歳のとき。
父親もエジプト旅行中に命を落とします。

両親を失ったシャルロット。
しかし、彼女には莫大な遺産が残されました。
祖父エゲルトン・リー・ウィンスロップの信託財産です。
彼女は当時としては破格の額を相続し、莫大な富を背負うことになりました。

7歳になった彼女は、ロンドンのタイト・ストリートを訪れます。
ジョン・シンガー・サージェントのアトリエです。

当時のサージェントは、社交界の肖像画家として頂点にいました。
しかし、彼の心は疲弊していました。
大人の肖像画は、お世辞や誇張ばかり。
形式的な仕事に、彼は重苦しさを感じていたのです。

そんな彼にとって、子供を描く時間は特別なものでした。
子供には、誇張も嘘も必要ありません。
純粋な内面だけを見つめることができる。
それは画家にとって、救いの時間だったのです。

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