Peter A. B. Widener ピーター・A・B・ワイドナー

1902年

肖像画明暗対比
Peter A. B. Widener
寸法
148.9 × 98.4 cm
技法・素材
油彩、カンヴァス
所蔵
ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)

アメリカ人の両親のもとイタリアで生を受け、パリで若年期を過ごしたのちロンドンを拠点に活躍した画家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

サージェントは17世紀のオランダ・フランドル絵画に敬意を表し、強烈な明暗対比(チアロスクーロ)を採用している。左上からの光が顔の右側や背後に深い陰影を投げかけ、威厳を引き立てる。スラックスや懐中時計のチェーンは、数本の素早い筆致で的確に表現されている。

✦ この絵の舞台

本作はロンドンのタイト・ストリートにあったサージェントのアトリエで制作された。完成後、この肖像画はワイドナーが所有する巨大な邸宅「リンウッド・ホール」の「ヴァン・ダイク・ルーム」の暖炉の直上に飾られた。周囲には彼が収集した古典肖像画群が掛けられていた。

✦ 時代背景

19世紀末から20世紀初頭のアメリカは「金メッキ時代」と呼ばれ、急速な産業化により新興富裕層が台頭した。彼らは自らの社会的地位や文化的な洗練を誇示するため、ヨーロッパの古典美術を収集し、サージェントのような高名な画家に肖像画を依頼した。

✦ 鑑賞のための問い

暗闇の中から浮かび上がる彼の表情から、あなたはどのような感情を読み取りますか?

暗い背景の中、左上からの光が初老の男を照らし出している。
彼は暗緑色のコートを着て、右手は後ろの木製のドアに添えられている。

男の名はピーター・アレル・ブラウン・ワイドナー。
フィラデルフィアの労働者階級に生まれ、肉屋として訓練を受けた彼は、南北戦争で北軍に肉類を供給し、最初の富を築く。
その後、路面電車や都市交通に投資し、米国トップクラスの資産家へと登り詰めた。

1902年、彼はロンドンにあるサージェントのアトリエを訪れた。
完成したこの肖像画は、彼の巨大な邸宅「リンウッド・ホール」に飾られた。
場所は「ヴァン・ダイク・ルーム」の暖炉の真上。
彼は自らの姿を、古典の宮廷肖像画の系譜に連ならせようとした。

1903年には、サージェント自らが彼の邸宅を訪問している。
そこで2点目の肖像画が描かれるほど、二人の間には知的な交流があった。
すべては順風満帆に見えた。

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