On White II 白の上で II
1923年

- 寸法
- 105 × 98 cm
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 所蔵
- ポンピドゥー・センター(フランス、パリ、国立近代美術館)
✦ 見どころ(技法・色彩)
ロシアの構成主義などの刺激を受けた、純粋幾何学形態による構成が見どころです。ほぼ正方形のカンヴァス上で、円や鋭い三角形、チェッカーボード模様が、中心の遠心力によって砕け散るように配置されています。無限の奥行きを持つ「白」の背景に、鮮烈な赤、黄、青の原色が重なり合って二次的な色調を生み出し、それらを力強い黒い線が貫くことで、画面全体の完璧な均衡を保っています。
✦ この絵の舞台
特定の現実の風景は描かれておらず、重力から切り離された宇宙的空間が舞台です。しかしその深層には、カンディンスキーがロシア時代から描き続けてきた神話的・キリスト教的テーマが隠されています。かつて描かれた北方の深い森や教会の丸屋根といったロシア風の風景要素は、鋭い三角形へと変貌し、無重力の空間を浮遊しています。
✦ 時代背景
1923年、カンディンスキーがドイツ・ワイマールのバウハウスで教授として教鞭を執っていた時期に制作されました。ロシア革命後の混乱から逃れてドイツに帰還した彼は、バウハウスの合理主義的で先進的な造形思想と共鳴します。自身の感性的な美学をより論理的・構造的なアプローチへと純化させ、幾何学的要素が人間に与える心理的・精神的作用の研究に没頭していました。
白い背景の中に、円や鋭い三角形、四角形、そしてチェッカーボード模様が浮かんでいます。それらを斜めに引き裂くように、力強い黒い線が交差しています。
一見すると、現実の風景や人物を一切描かない、純粋な幾何学模様の組み合わせに見えるでしょう。
カンディンスキーがバウハウスで教えていた、点や線、面といった要素の論理的な配置。
感情を排した、冷たい抽象画。
そう思われがちです。
でも実は、この絵の奥底には、彼がずっと描き続けてきた具体的なモチーフが隠されています。
1917年、カンディンスキーはモスクワで、ロシア軍将軍の娘であるニナ・アンドレエフスカヤと結婚しました。
彼よりはるかに若かったニナとの間に、最愛の一人息子を授かります。
しかし、その子はわずか3歳でこの世を去ってしまいました。
深い悲しみ。
さらにロシア革命後の混乱が、彼らを追い詰めます。
二人は祖国を逃れ、1921年末にドイツへと帰還しました。
1923年、カンディンスキーはワイマールのバウハウスで教授として教鞭を執っていました。
彼は、バウハウスの合理主義的で先進的な造形思想と共鳴し、自身の感性的な美学をより論理的なアプローチへと純化させていきます。
この絵に着手する前、彼は入念な構成の裏付けを得るため、1922年12月22日付で中国インクと水彩による極めて精密な予備習作を制作しました。
それは、1920年に制作した古い作品の再考でもありました。
画面中央を鋭く貫く、主軸の対角線。
そして、鋭利な黒いクロス状の形態。
これは単なる線ではありません。
かつて彼が具象的に描いていた、「馬上の騎士聖ゲオルギウスが手にする槍」が、極限まで抽象化されたものだと判明しています。
かつて北方の深い森や教会の丸屋根といったロシア風の風景として描かれていた要素も、ここでは鋭い三角形やジャギへと完全に姿を変え、重力から切り離された宇宙的空間を浮遊しています。
悲劇を乗り越えたカンディンスキーとニナにとって、バウハウスでの生活は穏やかで実り多いものでした。
彼はこの絵の仕上がりに、深い愛着と自負を抱いていました。
1925年にバウハウスがデッサウへ移転した際、彼はニナとともに暮らすアパートの食堂に、この作品を堂々と掲げました。
この続き:約340文字

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