Sunflowers ひまわり
1888年

- 寸法
- 92.1 × 73.0 cm
- 技法・素材
- 油彩・カンヴァス
- 所蔵
- ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
南仏のアトリエにおける仲間との連帯と、自らの存在証明を懸けた強烈な歓喜。 友情と感謝を意味する黄色で空間を埋め尽くし、理想の共同体への希望を刻みつけた、魂の装飾。
✦ 見どころ(技法・色彩)
背景、花瓶、テーブル、花びらのすべてを、明度と彩度の異なる「黄色の同系色」のみで塗り固める単色(モノクローム)的な構成が最大の見どころです。補色対比をあえて避け、微妙な色合いの違いだけで立体感と調和を生み出しています。また、希釈剤で薄めない粘度の高い油彩絵具を直接塗りつける「厚塗り」技法により、強烈な生命感が表現されています。
✦ この絵の舞台
フランス南部プロヴァンス地方アルル市のラマルティーヌ広場2番地に実在した「黄色い家」。ゴッホは1888年5月にこの建物を借り、前衛芸術家が集う「南仏のアトリエ」の拠点にしようとしました。8月下旬、猛暑と烈風ミストラルが吹き荒れる中、彼は室内に留まり、早朝から自然光の変化と花の萎れに抗いながら制作に没頭しました。
✦ 時代背景
19世紀半ば以降の化学工業の発展により、人工合成された新しい顔料「クロムイエロー」がチューブ入り絵具として大量生産されるようになりました。また、光の移ろいを捉える印象派から一歩進み、画家の内面や主観を強烈な色彩で表現する「ポスト印象派」が台頭。太い輪郭線を用いるクロワゾニズムや、日本の浮世絵版画の影響が交錯する時代でした。
黄色い壁を背にして置かれた、二色の花瓶。
そこから力強く茎を伸ばす、15本のひまわり。
青い蕾から、黄金色に広がる大輪の花。
そして、種を重く垂れ下げたものまで。
ひとつの花瓶の中に、命のあらゆる段階がひしめき合っています。
ゴッホといえば、狂気。
精神を病んだ孤独な天才が、破滅的な衝動のままに描きなぐった奇跡の一枚。
そんな風に語られることが多いかもしれません。
でも実は、この絵が描かれたとき、彼はきわめて正気でした。
それどころか、高度な計算と、希望と歓喜に満ち溢れていたのです。
1888年。
パリの過酷な生活に疲弊したフィンセント・ファン・ゴッホは、南仏のアルルへ辿り着きます。
ラマルティーヌ広場2番地。
彼が借りたのは、外壁が鮮やかな黄色に塗られた「黄色い家」でした。
ここで彼は、ある夢を抱きます。
前衛芸術家たちが集い、共に生活し創作する「南仏のアトリエ」を作ること。
同年8月。
プロヴァンス特有の猛暑と、烈風ミストラルが吹き荒れる中。
彼は室内にこもり、連作の制作に没頭します。
目的は、10月にやってくる画家ポール・ゴーギャンを歓迎するため。
彼に割り当てた客間の壁を飾るために、この絵は描かれました。
ゴッホにとって黄色は、「感謝」や「友情」を意味する特別な色。
弟テオや友人エミール・ベルナールへの手紙で、彼はこう宣言しています。
ひまわりは僕のものだ、と。
早朝に摘み取ったひまわりが萎れてしまう前に、一気に描き上げる。
新しい人工顔料クロムイエローを使い、同系色の微妙な違いだけで画面を構成する。
それは狂気ではなく、極めて冷静で革新的な挑戦でした。
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出典・参考資料
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