View of Delft デルフト眺望

- 寸法
- 96.5 × 115.7 cm
- 技法・素材
- 油彩・カンヴァス
- 所蔵
- マウリッツハイス王立美術館(ハーグ)
単なる地誌的な記録画への静かな反逆。現実の風景を解体し、自らの手で完璧な調和と静寂の空間へと再構築した、画家としての矜持。
✦ 見どころ(技法・色彩)
石造りの建物のざらざらした質感を表現するため、下塗りの絵具の中に砂を意図的に混入させています。また、水面の光の反射は、白や黄色の小さな点描を打つことで繊細に表現されています。画面中央には、遠近法の直線を引くために用いられた針穴が確認されています。
✦ この絵の舞台
舞台は、オランダ南ホラント州デルフトの南端に実在した船溜まり「コルク」およびスヒー川の河口です。物資の輸配送や乗合船の発着で賑わう商業的ハブでした。太陽の照射角度から早朝の光景であり、樹木が青々と葉を茂らせていることから晩春から夏の情景であることがわかっています。
✦ 時代背景
17世紀オランダ絵画市場では、都市への誇りを背景に都市景観画が流行していました。また、1660年春から1661年秋にかけて、新教会の塔のために新しい組み鐘を設置する工事が行われていました。絵の中の鐘楼が空であることは、この時期の史実と完全に一致しています。
画面の三分の一以上を占める、広大な空と流れる雲。
その下に広がるのは、水面に影を落とすデルフトの市街です。
17世紀オランダの風景を切り取った、静謐な一枚。
まるで写真のように正確な風景画だと、一見すると思えるでしょう。
実際、フェルメールはカメラ・オブスキュラという光学機器を使い、
投影された景色をそのままなぞり描いたのだと、長く言われてきました。
でも実は、この絵は現実の風景そのままではありません。
彼は意図的に、目の前の現実を大胆に改変しているのです。
1660年。
20代後半のヨハネス・フェルメールは、故郷デルフトで画家としての評価を高めていました。
妻カタリーナとともに裕福な義母の屋敷に暮らし、生活は安定していた時期です。
彼はスヒー川南岸にある建物の2階から、この景色を観察しました。
季節は晩春から夏。
朝の光が、東から街を照らしています。
奥に見える新教会の塔には、鐘が描かれていません。
史実によれば、1660年春から翌年秋にかけて、新しい鐘の設置工事が行われていました。
フェルメールはまさにその期間、空っぽの鐘楼を見つめていたのです。
しかし、彼は見たままをキャンバスに写したわけではありませんでした。
現実の地理と比べると、新教会の塔は実際よりも中央寄りに移動されています。
右側にあるロッテルダム門は、高さを低く平坦に。
二つの門を結ぶ跳ね橋は、直線的に長く引き延ばされました。
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