On the Bank of the Seine, Bennecourt セーヌ河畔、ベンヌクール
1868年

- 寸法
- 81.5 × 100.7 cm
- 技法・素材
- 麻地キャンバスに油彩
- 所蔵
- シカゴ美術館
✦ 見どころ(技法・色彩)
X線調査により、カミーユの右隣の水面に「もう一人の大人」が描かれていたことが判明しました。モネは元の絵の具を削り落とさず、上から太く粗いタッチの青い絵の具で塗りつぶし、人物を一人に絞り込んでいます。また、対岸の家々や水面は均一な色面で捉えられ、未完成のエスキスのような即興性が残されています。
✦ この絵の舞台
舞台はセーヌ川に浮かぶ中州「グランド・イル」の平坦な岸辺です。手前の木陰にはカミーユが腰掛け、対岸にあるベンヌクールの河岸集落「グロトン」を静かに見つめています。対岸の斜面には渡し船の乗降場があり、手前には一艘の手漕ぎボートが係留されています。パリから鉄道でアクセスしやすい新興の避暑地でした。
✦ 時代背景
1868年春、モネは極度の困窮と精神的絶望の渦中にありました。前年に長男ジャンが誕生したものの、父から仕送りを打ち切られます。生活費の安いグロトンの旅館に滞在しますが、宿代が払えず強制退去に。絶望したモネはセーヌ川で自殺を試みました。本作は、この悲劇的な滞在期から生き残った唯一の絵画です。
木陰の草地に腰を下ろす、縞模様のドレスを着た女性。
彼女の視線の先には、穏やかなセーヌ川と対岸の家々が広がっています。
描かれているのは、モネの恋人であり後の妻となるカミーユ・ドンシュー。
水面には景色が映り込み、のどかな休日の風景に見えます。
愛する女性と過ごす、静かで満ち足りた時間。
そんな風に感じるかもしれません。
でも実は、この絵には隠された秘密があります。
カミーユのすぐ右側の水面を見てください。
少し不自然に絵の具が盛り上がっているのが分かるでしょうか。
シカゴ美術館の保存科学部門によるX線調査で、驚くべき事実が判明しました。
カミーユの隣には、もう一人の大人が描かれていたのです。
ボンネット帽子をかぶったその人物の頭部と全身の輪郭。
モネはそれを削り落とすことなく、上から太く粗いタッチの青い絵の具で塗りつぶしていました。
あえてカミーユ一人のシルエットに絞り込んだのです。
なぜ、隣の人物を消し去り、彼女を一人にしたのか。
1868年の春。
モネは、人生のどん底にいました。
前年の夏、カミーユとの間に長男ジャンが誕生します。
しかし、厳格な父アドルフは彼女との関係を一切認めません。
仕送りを完全に打ち切られてしまったのです。
定収入のないモネは、宿代の支払いに追われ続けていました。
小説家エミール・ゾラの紹介で、彼らはベンヌクールの集落「グロトン」へ向かいます。
パリから近く、生活費が安く済む田舎の避暑地。
デュモン旅館に滞在したものの、モネの困窮は改善しませんでした。
結局そこでも宿代が払えなくなります。
強制退去。
家族を養うことも、絵を描き続けることもできない。
絶望。
宿を追い出された翌晩、モネはセーヌ川に身を投げました。
自殺未遂。
幸いにも命を取り留めたモネは、カミーユとジャンを置いて一人パリへ戻ります。
パトロンたちに資金援助を請う手紙を送り続けるために。
この絵は、そんな悲劇的なグロトン滞在期から生き残った、唯一の作品なのです。
この続き:約386文字

この物語の結末を含む、すべての記事が読み放題
- 52本
ストーリー記事週1〜2本更新
週末の夜、一杯のコーヒーと楽しむ『絵画×名曲の物語』アーカイブ
- 362点
解説つき絵画毎日ふえています
『見るだけ』から『読み解く』へ。巨匠たちの筆跡と狂気に触れる名画アーカイブ
- 45曲
名曲ライブラリー毎日ふえています
知ってから聴くと、耳に届く音が変わる。BGMを一生モノのアートに変える名曲解説
マイノート機能無制限
読むたびに、あなただけの感性が蓄積されていく『デジタル美術手帳』
既にアカウントをお持ちの方は ログイン
おすすめの絵画
ほかの画家
内容に誤りがある場合は こちらからご報告ください
このサイトは reCAPTCHA によって保護されており、Google のプライバシーポリシーと利用規約が適用されます。



















