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On the Bank of the Seine, Bennecourt セーヌ河畔、ベンヌクール

1868年

印象派
On the Bank of the Seine, Bennecourt
寸法
81.5 × 100.7 cm
技法・素材
麻地キャンバスに油彩
所蔵
シカゴ美術館
クロード・モネ

フランス

クロード・モネClaude Monet

1840 – 1926

「印象派の父」とも称される、フランスを代表する画家。 自然の風景や水面に反射する光、天候によって絶えず移り変わる情景を、鋭敏な感覚でキャンバスに捉えた作風で広く…

✦ 見どころ(技法・色彩)

X線調査により、カミーユの右隣の水面に「もう一人の大人」が描かれていたことが判明しました。モネは元の絵の具を削り落とさず、上から太く粗いタッチの青い絵の具で塗りつぶし、人物を一人に絞り込んでいます。また、対岸の家々や水面は均一な色面で捉えられ、未完成のエスキスのような即興性が残されています。

✦ この絵の舞台

舞台はセーヌ川に浮かぶ中州「グランド・イル」の平坦な岸辺です。手前の木陰にはカミーユが腰掛け、対岸にあるベンヌクールの河岸集落「グロトン」を静かに見つめています。対岸の斜面には渡し船の乗降場があり、手前には一艘の手漕ぎボートが係留されています。パリから鉄道でアクセスしやすい新興の避暑地でした。

✦ 時代背景

1868年春、モネは極度の困窮と精神的絶望の渦中にありました。前年に長男ジャンが誕生したものの、父から仕送りを打ち切られます。生活費の安いグロトンの旅館に滞在しますが、宿代が払えず強制退去に。絶望したモネはセーヌ川で自殺を試みました。本作は、この悲劇的な滞在期から生き残った唯一の絵画です。

✦ 鑑賞のための問い

あなたがこの川辺に座っていたら、対岸の景色からどんな音が聞こえてくると思いますか?

木陰の草地に腰を下ろす、縞模様のドレスを着た女性。
彼女の視線の先には、穏やかなセーヌ川と対岸の家々が広がっています。

描かれているのは、モネの恋人であり後の妻となるカミーユ・ドンシュー。
水面には景色が映り込み、のどかな休日の風景に見えます。
愛する女性と過ごす、静かで満ち足りた時間。
そんな風に感じるかもしれません。

でも実は、この絵には隠された秘密があります。

カミーユのすぐ右側の水面を見てください。
少し不自然に絵の具が盛り上がっているのが分かるでしょうか。
シカゴ美術館の保存科学部門によるX線調査で、驚くべき事実が判明しました。

カミーユの隣には、もう一人の大人が描かれていたのです。
ボンネット帽子をかぶったその人物の頭部と全身の輪郭。
モネはそれを削り落とすことなく、上から太く粗いタッチの青い絵の具で塗りつぶしていました。
あえてカミーユ一人のシルエットに絞り込んだのです。

なぜ、隣の人物を消し去り、彼女を一人にしたのか。

1868年の春。
モネは、人生のどん底にいました。

前年の夏、カミーユとの間に長男ジャンが誕生します。
しかし、厳格な父アドルフは彼女との関係を一切認めません。
仕送りを完全に打ち切られてしまったのです。

定収入のないモネは、宿代の支払いに追われ続けていました。
小説家エミール・ゾラの紹介で、彼らはベンヌクールの集落「グロトン」へ向かいます。
パリから近く、生活費が安く済む田舎の避暑地。
デュモン旅館に滞在したものの、モネの困窮は改善しませんでした。

結局そこでも宿代が払えなくなります。

強制退去。

家族を養うことも、絵を描き続けることもできない。
絶望。
宿を追い出された翌晩、モネはセーヌ川に身を投げました。

自殺未遂。

幸いにも命を取り留めたモネは、カミーユとジャンを置いて一人パリへ戻ります。
パトロンたちに資金援助を請う手紙を送り続けるために。
この絵は、そんな悲劇的なグロトン滞在期から生き残った、唯一の作品なのです。

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