The Artist’s Garden at Vétheuil ヴェトゥイユの芸術家の庭
1881年

- 寸法
- 151.5 × 121 cm
- 技法・素材
- キャンバスに油彩
- 所蔵
- ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)
✦ 見どころ(技法・色彩)
地平線が極めて高い位置に設定された縦長の構図が特徴です。視線は高い石段とひまわりの壁に遮られ、絵の奥ではなく表面の質感へと引き戻されます。強い陽光を浴びる砂利道の白に対し、ひまわりの影には青や暗い紫、緑などの色が並べられています。手前の青と白の鉢も、背後の緑や上空の金色の光、夕焼けのピンク色などを反射し、反対の色同士が細かく溶け合って表現されています。
✦ この絵の舞台
舞台はセーヌ川が流れる小さな村ヴェトゥイユ。モネが大家族のために借りていた家の正面に広がるテラス庭園です。家の前の道路よりも一段低いレベルに位置し、セーヌ川へと下る傾斜地を利用して、モネ自身が家主との特別な契約に基づいてテラス状に整え、多様な植栽を行いました。画面の中心を砂利の小道が伸び、左右に巨大なひまわりが背高くそびえています。
✦ 時代背景
1878年9月から1881年末にかけてのヴェトゥイユ滞在期は、モネにとって精神的・肉体的苦痛の絶頂期でした。1879年に妻カミーユが他界し、モネは自身の息子とアリス・オシュデの子供たちを含む10人の大家族を養う義務を負います。極度の貧困と美術市場からの黙殺、地域社会からの非難に耐えながら、モネはこの地で約300枚の絵を描き上げました。
画面の中央を、真っ白な砂利の小道が伸びています。
その両脇には、巨大なひまわり。
力強い黄色の花が、夏の陽光を浴びて咲き誇っています。
小道では、赤い手押し車を持った幼い男の子が遊んでいます。
真夏の光に包まれた、穏やかで幸福な家族の風景。
一見すると、そのように思えるかもしれません。
でも実は、違いました。
この絵が描かれた1881年の夏。
それはモネの生涯において、精神的にも肉体的にも、苦痛の絶頂期だったのです。
舞台は、セーヌ川が流れる小さな村ヴェトゥイユ。
モネは1878年9月から、大家族のためにこの村の家を借りていました。
しかし翌年の9月、悲劇が彼を襲います。
最愛の妻カミーユの死。
彼女は、32歳の若さでこの世を去りました。
残されたモネの肩には、重い責任がのしかかります。
自身の2人の幼い息子、ジャンとミシェル。
さらに、事実上同居していたアリス・オシュデと、彼女の6人の子供たち。
総勢10人もの家族を、彼一人で養う義務に縛られたのです。
当時のモネは、極度の貧困に喘いでいました。
美術市場からは黙殺され、絵は売れません。
さらに、アリスとの関係は不道徳だとして、地域社会からの非難にも晒されていました。
絶望のどん底。
それでもモネは、執念深くキャンバスに向かいます。
家の前の傾斜地を自らテラス状に整え、多様な植物を植えたこの庭で。
彼は約300枚にもおよぶ絵に、生命を注ぎ込みました。
そして1881年の夏。
モネは、このヴェトゥイユの家を去らねばならない状況に直面します。
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