The Kiss IV 接吻 IV
1902年

- 寸法
- イメージ:47.0 × 47.0 cm / シート:53.4 × 60.0 cm
- 技法・素材
- 多色木版画、日本和紙
- 所蔵
- ミュンハ美術館(オスロ)など
✦ 見どころ(技法・色彩)
ムンク独自の「ジグソーパズル工法」が見どころです。厚い版木を糸鋸で人物と背景の二つに切り離し、人物には黒いインク、背景にはグレーのインクを塗りました。背景には松や針葉樹の無加工の木目をそのまま生かしています。これらをパズルのように再び組み合わせ、一回のプレスで和紙に刷り上げました。人物と背景が独立した輪郭を持ちながらも、木目を通じて完全に調和し合うという驚異的な効果を生み出しています。
✦ この絵の舞台
本作において、具体的な日常のインテリアや窓外の風景は完全に駆逐されています。特定の場所を示す要素はなく、男女は画面中央に記念碑的なモニュメントのように屹立しています。背景を走る垂直方向の強烈な木目のパターンが、二人の融合が人間社会の一事象ではなく、宇宙や自然全体の根源的な意志と直結しているかのような原初的な空間を作り出しています。
✦ 時代背景
ムンクは1891年から1897年にかけて、窓辺で抱き合う男女の油彩画を何度も試みていました。1895年にこの主題を銅版画にした後、木版画という素材に出会ったことで、彼の表現は一気に抽象化へと向かいます。1897年の『接吻 I』から段階的に版木の修正を重ね、1902年に本作『接吻 IV』へと到達しました。版画という複製メディアの限界を拡張し続けた、彼の技法的実験の歴史が背景にあります。
縦に走る強烈な木目を背景に、抱き合う二人の人物。
具体的な部屋の様子や窓の外の風景は、ここには一切描かれていません。
画面の中央に、二人は記念碑のように立っています。
エドヴァルド・ムンクは、このモチーフに長い年月を費やしました。
1891年から1897年にかけて、彼は窓辺で抱き合う男女の油彩画を何度も描いています。
1895年には、その構図を銅版画にしました。
彼は止まらない。
木版画という素材に出会ったことで、彼の表現は大きく変わっていきます。
1897年に最初の木版画を作り、翌年に次のバージョンを制作。
そして1902年、ついにこの作品にたどり着きました。
彼は、厚い版木を糸鋸で切り離しました。
人物と、背景。
互いの頭部は、粗い彫刻刀で掻きむしるように削り取られています。
目や鼻、口といった顔のパーツは完全に消し去られました。
個人のアイデンティティを剥ぎ取り、愛撫する二人の肉体を、一つの黒いシルエットにしたのです。
- この作品は 狂気の天才 の「あなたのための6作品」に入っています → 見る
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