Anxiety 不安

1896年

表現主義
Anxiety
寸法
図版:458 × 373 mm、用紙:593 × 435 mm
技法・素材
木版画(丸鑿と平鑿による彫刻)、和紙
所蔵
ノルウェー国立美術館、ムンク美術館、個人蔵
エドヴァルド・ムンク

ノルウェー

エドヴァルド・ムンクEdvard Munch

1863 – 1944

19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した、ノルウェーを代表する画家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

平鑿と丸鑿を用いて荒々しく切り刻まれた木版画です。和紙に直接吸い込まれた厚い黒インクのコントラストが、物理的な圧力と切り裂かれるような感覚を視覚的に伝えています。空に描かれたうねる細い線は、個人の心理的ストレスが風景を変形させていく表現主義の先駆けとなっています。

✦ この絵の舞台

クリスチャニア(現オスロ)の南東に位置するエーケベルグの丘からのパノラマです。眼下には濃紺のオスロ・フィヨルドと街の灯が広がっています。ムンクがかつて「巨大で無限の叫び」を体感した場所であり、自然のうねりと都市の群衆が交差する象徴的な舞台として描かれています。

✦ 時代背景

1890年代半ばのヨーロッパは、急速な都市化と技術革新が進む一方で、人々の間に精神的な荒廃や不安が蔓延していました。伝統的な社会規範から解放された近代都市の群衆が抱える、激しい孤立や疎外感が、世紀末のデカダンスや神の不在を巡る議論とともに芸術の主題となっていました。

✦ 鑑賞のための問い

亡霊のように立ち尽くす群衆の中で、あなたは誰と一番目が合いますか?

死人のような血の気のない顔立ちをした群衆。
彼らがこちらを見つめています。
頭上には、うねるような細い線が空に描かれています。

1892年1月。
ムンクは滞在先のニースで、ある体験を日記に記しました。

2人の友人と道を歩いていた夕暮れ時のこと。
突然、空が血のように赤く染まりました。
その時、彼は自然を引き裂く「巨大で無限の叫び」を体感したのです。

場所は、クリスチャニアの南東にあるエーケベルグの丘。
眼下には濃紺のフィヨルドと街の灯が広がっていました。
この強烈な記憶から、あの『叫び』が生まれます。

しかし。
彼の内なる恐怖は、それだけでは終わりませんでした。

ムンクは、自然のうねりの中に都市の群衆を立たせます。
1896年にパリで展示された際、批評家は彼らをこう呼びました。
「さまよえる胎児」と。

急速に都市化が進む社会。
人々は伝統から解き放たれながらも、激しい孤立と疎外感に喘いでいました。

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