
- 寸法
- 71 × 27.3 cm
- 技法・素材
- カラーリトグラフ(多色刷り石版画)、紙
- 所蔵
- ミュシャ財団
La Plume
1899年
✦ 見どころ(技法・色彩)
抑えられたパステル調の色彩と、極めて繊細な輪郭線が特徴です。横顔に近いポーズで佇む金髪の女性は、精巧なジュエリーを身につけています。緻密に描かれた衣服のひだと、背景の直線的でモザイク的な幾何学パターンが対比され、画面に装飾的な奥行きと格調高いリズムを与えています。
✦ この絵の舞台
実在の風景ではなく、円盤状の幾何学的なモザイクモチーフで埋め尽くされた空間です。対となる作品『サクラソウ』が有機的な草花を描いているのに対し、こちらは自然に頼らない硬質な抽象パターンが用いられています。女性が手にするガチョウの羽根ペンは、知性や執筆を象徴しています。
✦ 時代背景
1890年代後半のパリでは、ポスターから宣伝の文字をなくした「装飾パネル」が考案されました。ミュシャは印刷商シャンプノワと契約し、この安価で大量生産できる美術品を制作します。一部の富裕層だけでなく、一般庶民の家庭にも美を届ける「芸術の民主化」を体現するものでした。
幾何学的なモザイク模様を背に、一人の女性が静かに佇んでいます。
髪やドレスには、精巧なジュエリー。
その手には月桂樹の葉と、一本のガチョウの羽根ペンが握られています。
1899年のパリ。
アルフォンス・ミュシャは、印刷商のシャンプノワと専属契約を結んでいました。
月給制による、安定した生活。
ヴァル・ド・グラース通りに広いアトリエを構え、制作に没頭する日々。
シャンプノワは、ある画期的な商品を考案します。
ポスターから宣伝の文字を完全になくした「装飾パネル」です。
安価で大量に印刷できる、新しい美術品でした。
ミュシャは、この試みに強く共鳴します。
芸術は、一部の富裕層だけのものではない。
一般庶民の貧しい家庭の壁をも彩るべきだ。
誰もが享受できる、安価な美。
彼はそんな「芸術の民主化」を信じていました。
女性が手にする羽根ペン。
これは、知性や執筆を象徴するアイテムです。
そして同時に、ある雑誌の名前でもありました。
文芸誌『ラ・プリューム』。
1897年、この雑誌は主催するギャラリーで個展を開き、特別号で特集を組んで彼の評価を不動のものにしました。
画家にとって、大きな恩義のある名前だったのです。

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