Biscuits Lefèvre-Utile
寸法
61.5 × 44.3 cm
技法・素材
多色石版画(カラーリトグラフ)
所蔵
ミュシャ財団

Biscuits Lefèvre-Utile

1896年


チェコの南モラヴィア地方出身で、アール・ヌーヴォー様式を代表する世界的芸術家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

人物や衣服の輪郭をくっきりとした線で囲む手法が用いられています。色彩は、ゴールドやイエローといった麦や焼き菓子を連想させる暖色系を基調としています。そこに冷たいブルーや柔らかなグリーンを背景に配することで、全体の色彩的なバランスを整え、視覚的な美しさを際立たせています。

✦ この絵の舞台

19世紀末のパリにおけるベル・エポック期の洗練された空気が背景にあります。本作はカレンダー付きのポスターとして制作され、日常の空間を彩る実用性と芸術性を兼ね備えていました。収穫を象徴する小麦や大ぶりの花が装飾的に配され、ビスケットという身近な商品に豊穣で優雅なイメージを与えています。

✦ 時代背景

1890年代後半のパリでは、多色刷り石版画の技術革新により、色鮮やかなポスターが街頭を飾り「街頭の美術館」と呼ばれる社会現象が起きていました。企業がブランドイメージ向上のために一流の芸術家を起用する先進的な広告戦略が始まり、芸術と商業が深く結びついた時代です。

✦ 鑑賞のための問い

少女が勧めるビスケットを、あなたは誰と一緒に味わいたいですか?

髪に大ぶりの花を飾り、優雅に微笑むひとりの少女。
彼女の手には、ビスケットが乗ったトレイが掲げられています。

1890年代後半のパリ。
街角は、色鮮やかなポスターで溢れていました。
人々はそれを「街頭の美術館」と呼んだ。

1894年末、演劇のポスターで一夜にして時代の寵児となった画家。
アルフォンス・ミュシャです。
1896年、彼はパリの有力な印刷会社と独占契約を結びます。
生活の安定を手に入れた彼のもとに、ある依頼が舞い込みました。

依頼主は、フランスのナントにある老舗ビスケット製造業者。
ルフェーヴル=ユティル社、通称LU社です。

経営者のルイ・ルフェーヴル=ユティルは、考えていました。
自社製品のブランドイメージを、もっと高めたい。
そのために、当代一流の芸術家を起用する。
先進的な広告戦略でした。

ミュシャは、その期待に応えます。
ただの商品宣伝ではありません。
ビスケットを、洗練された社交界の贅沢品として描いたのです。

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