
- 寸法
- 110.5 × 76.5 cm
- 技法・素材
- カラーリトグラフ
- 所蔵
- ミュシャ財団
Monaco, Monte-Carlo. Chemins de Fer P.L.M.
1897年
✦ 見どころ(技法・色彩)
女性を取り囲むように、ライラックやスミレなどの春の花々が複雑にうねる曲線を描いて配置されています。この円形の装飾文様は、カジノのルーレットの回転盤を象徴すると同時に、南仏へ向かう鉄道の車輪やレールをも暗示する巧みなデザインとなっています。
✦ この絵の舞台
地中海に面した南仏コート・ダジュールのリゾート地、モナコ公国のモンテカルロが舞台です。背景には険しい海岸線の山々と深いコバルトブルーの海が広がり、左奥にはモンテカルロ・カジノの特徴的な2つの塔のシルエットが描かれています。
✦ 時代背景
1897年当時、ヨーロッパの特権階級や文化人の間では、寒冷なパリの冬を避けて温暖な南仏へ長距離鉄道で旅をすることがステータスでした。パリ=リヨン=地中海鉄道は、12時間以上に及ぶ豪華寝台列車の旅をアピールするため、このポスターを制作しました。
薄いドレスを纏った若い女性が、両手を頬に当ててうっとりと目を見開いています。
彼女を取り囲むように、春の花々が流れるような曲線を描いて絡み合っています。
1897年のパリ。
アルフォンス・ミュシャは、名声の絶頂にいました。
ほんの3年前まで、彼は無名の画家にすぎませんでした。
運命を変えたのは、1894年のクリスマス翌日。
女優サラ・ベルナールからの急な依頼でした。
彼が手がけた舞台ポスターは、あまりの斬新さに市民を熱狂させます。
夜の街頭から、ポスターを剥ぎ取って持ち帰る人が続出するほどでした。
一夜にして、彼は時代の寵児となったのです。
印刷会社と専属契約を結び、財政的な安定を手に入れたミュシャ。
そんなスター画家のもとに、ある大型の依頼が舞い込みます。
パリ=リヨン=地中海鉄道からの、宣伝ポスターのオファーでした。
当時、ヨーロッパの特権階級や文化人たちには、ある流行がありました。
寒く暗いパリの冬を抜け出すこと。
そして、気候が温暖で華やかな南仏へと、長距離鉄道で旅をすることです。
12時間以上に及ぶ、豪華寝台列車の旅。
それは、誰もが憧れるステータスでした。
鉄道会社は、この「贅沢な休暇」をアピールしたかったのです。

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