The Art of Painting 絵画芸術

- 寸法
- 120.0 × 100.0 cm
- 技法・素材
- 油彩・カンヴァス
- 所蔵
- ウィーン美術史美術館
職人仕事と見なされがちだった絵画を、詩や哲学と同等の高貴な芸術へと引き上げる強烈な自負。破産と死の淵にあっても決して手放さなかった、画家としての誇りと理想の到達点。
✦ 見どころ(技法・色彩)
モデルの青いドレスや前景の暗いカーテンの影には、高価な天然ウルトラマリンが惜しみなく使われ、画面全体に光の清涼感をもたらしています。また、画面中央やや右寄りの消失点に小さな針穴を開け、糸を張って正確な奥行き線を引く幾何学的な遠近法が用いられました。シャンデリアなどには、光の煌めきを油彩の小さな点で表す技法が効果的に使われています。
✦ この絵の舞台
フェルメールが居住していたデルフトの義母マリア・ティンスの館のアトリエの要素を参照しつつ、構図上完璧に再構成された「観念的・幻想的なアトリエ空間」です。床に敷き詰められた黒と白の大理石の格子模様は、1点透視遠近法の空間格子を定義するために幾何学的に構成されています。左側の見えない窓から差し込む光が、部屋全体を穏やかに照らし出しています。
✦ 時代背景
背景に掲げられた地図は、1636年に出版されたものです。制作当時の1660年代後半は、すでにオランダが北部と南部に分断された後の時代でした。政治的に過去のものとなった「統一17州の地図」をアトリエに掲げる構図は、かつて共通の文化と言語、そして偉大な芸術の伝統を共有していたネーデルラント全土の栄光に対する、強いノスタルジーを暗示しています。
引き開けられた重厚なタペストリーの奥に、光の差し込むアトリエが広がっています。
白と黒の衣装を着た画家がスツールに座っています。
青いドレスの女性を、カンヴァスに描き始めたところです。
背中を向けたこの画家は、フェルメール自身の自画像だと言われがちです。
モデルの女性も、妻のカタリーナだと言われることがあります。
私的な日常風景を描いたものだと、広く信じられてきました。
でも実は、顔が完全に隠されているため、これを自画像と断定することはできません。
制作された1660年代後半、妻は30代半ばで多数の出産を経ていました。
画面の若い女性の容姿とは合致しません。
これは特定の誰かの日常を写し取った絵ではないのです。
当時、フェルメールはデルフトの画家組合で理事を務めていました。
地域最高峰の画家として認知され、11人の子供を育てる大家族の長。
義母の支援を受けながら、絵画制作と画商の活動を並行していました。
この大作は、特定のパトロンからの注文で描かれたものではありません。
画家自身の純粋な自主制作作品として、アトリエに置かれていたのです。
アトリエを訪れる裕福な顧客たち。
彼らに自身の技術と教養の最高到達点を示すための、特別な一枚。
描かれているのは、歴史の女神クレイオーに扮した女性です。
名声を告げるトランペットと、歴史を記録する書物を抱えています。
職人としての姿ではなく、歴史を描く高貴な芸術家としての姿。
絵画こそが最高の芸術であるという、強い主張が込められていました。
1672年、フランスの侵略による「災厄の年」が訪れます。
オランダの経済は崩壊し、美術市場も完全に瓦解しました。
フェルメールも多額の負債を抱え、破産状態に陥ります。
生活は困窮を極めました。
売り払え、と周りは言ったかもしれません。
しかし彼は、1675年に43歳で急逝するまで、この絵を決して手放しませんでした。
この続き:約544文字

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