Expectation (from Tree of Life)

- 寸法
- 下絵: 194 × 115 cm / 完成壁画: 高さ約 200 cm
- 技法・素材
- 下絵: 着色紙にガッシュ、グラファイト鉛筆、パステル、金彩 / 完成壁画: 大理石パネルにセラミック、金箔タイル、エナメル、真珠、貴石、ガラス、金象嵌
- 所蔵
- ウィーン応用美術館(MAK) / ストックレー邸
予算の制約を度外視してまで追い求めた、究極の総合芸術への執念。異文化の美と高価な宝石を惜しみなく注ぎ込み、永遠の時を刻む黄金の宇宙。
✦ 見どころ(技法・色彩)
古代エジプト壁画のように、女性の顔や足先は横を向き、胸部や衣装は正面を向く独特のポーズで描かれています。三角形に広がるドレスには、ホルスの目を思わせる抽象的な眼のモチーフが敷き詰められています。実際の壁画は、白大理石の基盤にセラミック、金箔タイル、エナメル、真珠、貴石、ガラスなどを埋め込むという、途方もなく贅沢なモザイク技法で制作されました。
✦ この絵の舞台
ベルギーのブリュッセルに建てられたストックレー邸の食堂が舞台です。この食堂は、建築から家具に至るまでを統合的な芸術作品とする「総合芸術」の概念に基づいて設計されました。両側の壁面には「生命の樹」の広大なモザイクパネルが配置され、その一方の中央にこの『期待』が据えられています。テーブルを囲む人々は、生と死を象徴する宇宙論的な装飾空間に包み込まれる構造になっています。
✦ 時代背景
1905年から1911年にかけての時期は、クリムトがウィーン大学天井画をめぐる激しい非難とスキャンダルを乗り越え、自身の芸術的成熟を示した「黄金の時代」の頂点にあたります。1903年のラヴェンナ訪問で目にしたビザンティン・モザイクの金箔表現や、ストックレー夫妻が収集していた古代エジプトや東洋の異文化コレクションが、クリムトの装飾的な美学に決定的なインスピレーションを与えました。
顔を横に向け、幾何学模様のドレスをまとった女性が立っています。
彼女の背後には、黄金の螺旋を描く「生命の樹」が画面いっぱいに渦巻いています。
1905年。
ベルギーの銀行家ストックレー夫妻が、邸宅の設計を依頼しました。
食堂の壁画を任されたのが、グスタフ・クリムトです。
夫妻は古代エジプトの彫刻やビザンティンの宝飾品を集めるコレクターでした。
クリムトは彼らの異文化コレクションに深く共鳴します。
そして、食堂全体をひとつの芸術作品にする「総合芸術」の実現に挑んだのです。
クリムトが構想したのは、途方もなく贅沢なモザイク壁画でした。
白大理石の基盤に、セラミックや金箔タイル。
さらにエナメル、真珠、貴石、ガラスを埋め込むというのです。
「この計画全体がとてつもなく高くつく仕事になることは、最初から分かっていた」
クリムトは、資金提供者に宛てた手紙でそう率直に打ち明けています。
要求される素材はあまりにも高価でした。
予算は著しく超過します。
それでもストックレー夫妻は、膨大な資金を提供し続けました。
妥協のない美を求める、画家の熱意に応えるために。
この続き:約261文字

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出典・参考資料
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