Jimmy Corsini (c. 1901)

習作
Jimmy Corsini (c. 1901)
寸法
46.9 × 31.0 cm
技法・素材
レイド紙に黒(およびグレー?)の木炭
所蔵
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

20世紀のアメリカ美術界において、都市や地方の景観を透徹した光影表現で捉えた具象画家である。

✦ 見どころ(技法・色彩)

手漉き風のすき目模様を持つレイド紙に、黒やグレーの木炭で描かれています。紙の微細な凹凸に木炭の粒子が定着することで、柔らかなグラデーションが生まれています。頬などの明るい部分は紙の素地を残し、影には深い黒を擦り込むことで、強い光の下での立体感を見事に表現しています。

✦ この絵の舞台

1901年頃のニューヨーク美術学校の教室が舞台です。当時のアメリカの美術教育では、生身のモデルを用いた観察写生が厳格に求められていました。ジミー・コルシーニという名の男性モデルが、柔らかい帽子とボウタイ姿で静かにポーズをとっています。

✦ 時代背景

1900年代初頭のアメリカは、急速な工業化と都市化が進む一方で、美術界ではヨーロッパのアカデミズムと新たな現実主義が交錯する過渡期にありました。若きホッパーも、アメリカ印象派のウィリアム・メリット・チェイスらの指導の下、厳密なデッサン訓練の渦中に身を置いていました。

✦ 鑑賞のための問い

画面の右側に残された薄い線から、あなたはどんな教室の空気を感じ取りますか?

柔らかい帽子をかぶり、ボウタイを締めたシャツ姿の男性。
彼は視線を下に向けて、静かに座っています。
深みのある目元、まっすぐな鼻筋、そして固く結ばれた薄い唇。

ジミー・コルシーニという名のこのモデル。
深い物思いに沈んでいるかのような、静寂な空気をまとっています。

一見すると、完成された肖像画のように見えます。
モデルの孤独な内面までをも見事に捉えた一枚として。
のちにアメリカの都市の孤独を描き出すことになる巨匠の、早熟な才能を示す作品として。

でも実は、これは展示を目的として描かれた「作品」ではありません。
画面の右側の余白に目を凝らしてみてください。
丸や十字の薄い線が残っているのがわかりますか。

これは、顔の比率や骨格のバランスを正確に測るために引かれたガイドラインです。
1901年頃のこと。
ニューヨーク美術学校に通っていた19歳のエドワード・ホッパー。
彼が教室で描いた、学習用のデッサンなのです。

当時のアメリカの美術教育。
そこでは生身のモデルを徹底的に観察し、解剖学的な正確さを身につけることが厳しく求められました。
のちに「天才」として神格化されるホッパー。
しかし、突然変異のように独自のスタイルを開花させたわけではありません。

近年の研究では、彼の初期の油彩画が美術雑誌の手本を模写したものであったことも判明しています。
彼は決して、最初から完成された独学の天才ではありませんでした。

他の画学生たちと同じように、教室の椅子に座り、目の前のモデルを見つめる。
手漉き風のレイド紙の凹凸に木炭を擦り込み、光と影のコントラストを地道に探求する。
そんな泥臭い基礎訓練の真っ只中に、19歳の彼はいました。

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