The Magic Circle(魔術の輪)
1886年
荒涼とした大地で、異国風のドレスを纏った美しい魔術師が一人。
手にした杖で、地面に燃え盛る炎の円陣を描き出している。
首には生きた蛇が巻き付き、円の外には邪悪を象徴するカラスやヒキガエルが群がっているが、彼女が引いた結界の内側には決して踏み入ることができない。
妖しくも幻想的な魔法の儀式を捉えた一枚。 でも実は、この絵が発表された1886年当時、イギリスの美術界は深い閉塞感に包まれていた。
権威ある「ロイヤル・アカデミー」の古い体質への批判が噴出し、美術家たちの間で対立が激化。
展覧会は批評家から「最悪の出来」とまで酷評される状態だった。
さらに、画家ウォーターハウス自身は私生活の記録をほとんど残さず、当時流行していたオカルト秘密結社と密かに関わっていたとも噂される謎多き人物だった。
当時の美術界において、魔女といえば「復讐に燃える陰湿な存在」や「男を破滅させる悪女」として描かれるのが常だった。
しかし、彼が描いたのは、自らの意志で魔法を操る、圧倒的に気高く自立した女性の姿。彼女のドレスに描かれた模様は、他者の悪意を退ける古代の魔除け「メドゥーサ」だという。
ドロドロとした美術界の論争や古い慣習の押し付け。
そんな混沌とした外界から彼女が切り離したこの炎の円陣は、画家自身が己の信じる「美」と「芸術の聖域」を守り抜くための、絶対的な結界だったのかもしれない。
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ラファエル前派の精神を色濃く受け継いだイギリスの画家。 イギリス人の画家の両親のもとローマで生まれ、ロンドンの王立芸術院(ロイヤル・アカデミー)で学んだのち、自…












