Charing Cross Bridge チャリング・クロス橋
1903年
印象派霧

- 技法・素材
- キャンバスに油彩
✦ 見どころ(技法・色彩)
ブルー、ラベンダー、ピンク、グリーンなどの色彩が、引っ掻くような、あるいは渦巻くような筆跡で厚く塗り重ねられています。直線的な鉄橋を流動的な霧で包み込む構図は、浮世絵の影響を感じさせます。また、列車が吐き出す白い煙が画面に一瞬の運動性を与える一方で、霧に霞む時計塔は現実の時間を曖昧にし、絵画特有の「光の時間」を生み出しています。
✦ この絵の舞台
ロンドンのテムズ川に架かるチャリング・クロス鉄道橋と、その背景に浮かぶ英国国会議事堂やビッグ・ベンの不鮮明な輪郭が描かれています。モネはテムズ川北岸のサヴォイ・ホテルの客室バルコニーから、南西を見下ろすアングルでこの光景を捉えました。当時のロンドンは産業革命の最盛期であり、石炭の排煙と自然の川霧が融合した濃厚なスモッグが大気を覆っていました。
✦ 時代背景
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ロンドンは産業革命による近代化の恩恵を受ける一方で、深刻な大気汚染に見舞われていました。一般の市民が嫌悪したこのスモッグを、モネは光を散乱させ、都市を神秘的に包み込む要素として肯定的に捉えました。近代の工業都市という人工的な環境を、絵画的な「崇高」へと変容させようとする芸術的試みの時代でした。

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