Boys Bathing
制作年
1899
寸法
36.0 × 44.2 cm
技法・素材
木版画
所蔵
ムンク美術館(オスロ)

Boys Bathing

1899年


✦ 見どころ(技法・色彩)

丸鑿を用いて板を深くえぐることで生じる、力強く荒削りな白い彫り線が特徴です。さらに、木版の板そのものの水平な木目を紙に擦り付けるように転写することで、空と水の物質的な質感を表現しています。印刷職人との協働による不規則なプレス圧も活かされています。

✦ この絵の舞台

舞台はオスゴールストランドの浜辺。ムンクが毎夏を過ごしたこの地は、氷河期の削磨作用で丸みを帯びた滑らかな花崗岩の岩肌と穏やかな海岸線が特徴です。本作では波や岩盤の輪郭が極限まで簡略化され、同心円状の装飾的パターンへと再構築されています。

✦ 時代背景

1899年当時のヨーロッパでは、都市文明の欺瞞から逃れ、「生の根源」を野生的な表現に託す未開主義的な木版画が流行していました。また、自然治癒や日光浴を推奨する「生改革運動」も萌芽しており、健康的な肉体への憧憬が高まっていた時代です。

✦ 鑑賞のための問い

岩の上に立つ少年は、海の中で泳ぐ彼らを見て何を思っているのでしょうか?

岩の上に立ち、腕を組んで静かに海を見つめる少年。
その視線の先では、別の少年たちが水の中で手足を広げて泳いでいます。

1899年、エドヴァルド・ムンクは深い苦悩の中にいました。
重い喘息とアルコール依存による精神の不安定化。
ノルウェー国内のサナトリウムでの療養を余儀なくされていたのです。
病弱な自らの肉体に対する、強い不全感。
そこから逃れるように、彼は健康な生命体としての「裸体」に執着します。

当時、ヨーロッパではゴーギャンの未開主義的な木版画が紹介されていました。
都市文明の欺瞞から逃れ、「生の根源」を野生的な表現に託す流行です。
ムンクもまた、洗練された銅版画から、力強い物質感を伴う木版画へと移行します。
原始的な生の衝動を、自らの手で刻み出すために。

この作品の制作にあたり、ムンクは熟練した印刷職人キルデボーと協働しました。
ムンクが求めたのは、均一ではない「かすれ」です。
あえて木目を強く出すための、不規則なプレス圧の調整。
キルデボーは、そんな画家の実験的な試みを全面的に技術支援しました。

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エドヴァルド・ムンク

ノルウェー

エドヴァルド・ムンクEdvard Munch

1863 – 1944

19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した、ノルウェーを代表する画家。

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