Boys Bathing 入浴する少年たち

1896年

海版画
Boys Bathing
寸法
29.7 × 23.6 cm
技法・素材
カラー・バーニッシュド・アクアチント、ア・ラ・プペによるインキング、バフ・レイド紙
所蔵
シカゴ美術館
エドヴァルド・ムンク

ノルウェー

エドヴァルド・ムンクEdvard Munch

1863 – 1944

19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した、ノルウェーを代表する画家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

アクアチント技法を駆使し、一度暗くした版面を削ることで少年たちの背中や水面に繊細なハイライトを与えています。また、1枚の金属版に手作業で異なる色インクを塗り分ける技法により、水色、黄土色、肉色の調和に満ちた独自の多色刷りを実現しました。

✦ この絵の舞台

ノルウェーの首都オスロから南に約100キロ離れた小漁村、オスゴールストランドの海岸。氷河期の削磨作用で丸みを帯びた滑らかな花崗岩の岩肌と、穏やかにうねる波が作り出す海岸線は、ムンクにとって「生のエネルギー」と「瞑想的な静寂」が共存する象徴的な舞台でした。

✦ 時代背景

1896年当時のヨーロッパ社会では、急速な都市化や工業化による退廃への反動として、自然治癒や日光浴、裸体での入浴を推奨する「生改革運動」が萌芽していました。ムンクはパリに拠点を置き、洗練された版画印刷工房と協働していました。

✦ 鑑賞のための問い

水の中を泳ぐ少年たちと、岸辺に立つ少年たち。あなたなら、どちらの側に立ちたいですか?

緑がかった水の中を、少年たちが自由に泳いでいます。
手前には、水面を見つめる少年たちの後ろ姿。
右端の少年は、赤い服を着ています。

1896年、パリ。
ムンクは名高い版画職人ポルカブフの工房で、
この作品の印刷に取り組んでいました。
当時のヨーロッパでは、都市化への反動として、
日光浴や裸体での入浴を推奨する運動が広まっていました。

ムンクが舞台に選んだのは、ノルウェーの小漁村、
オスゴールストランドの海岸です。
彼は1889年にこの地を訪れて以来、
毎年のようにここで夏を過ごしていました。
氷河期に削られて丸みを帯びた花崗岩の岩肌と、
穏やかにうねる波。
そこは彼にとって、生のエネルギーと
瞑想的な静寂が共存する場所でした。

なぜ彼は、水浴びをする少年たちを描いたのでしょうか。
ムンクは幼い頃、肺結核で母親と姉を亡くしています。
彼自身も病弱で、常に死の影を感じながら生きていました。
だからこそ、陽光の下で躍動する少年たちの姿は、
彼にとって特別な意味を持っていたのです。

失われた若さ。
そして、永遠に続く生のエネルギーに対する、強い憧れ。

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