Ohne Titel (Häuser) (ca. 1932)
都市
✦ 見どころ(技法・色彩)
極めて幾何学的かつ直線的な描線によって建築物の外観が描写されています。人間や動物、植物といった有機的な生命の気配が画面から完全に排除されているのが特徴です。この無人の構図が、モダニズム建築がもたらした都市の匿名性と、個人の実存的な疎外感を際立たせています。
✦ この絵の舞台
ウィーン、あるいはグラーツの郊外に位置する近代的な集合住宅地です。1920年代後半から1930年代初頭のウィーンでは、社会民主党市政下で「赤いウィーン」と呼ばれる大規模な労働者用市営住宅の建設が急速に進められていました。伝統的な装飾を排した厳格な機能主義の建築が描かれています。
✦ 時代背景
1932年当時のオーストリアは、世界恐慌による破壊的な経済危機に直面していました。ファシズム勢力と社会民主主義勢力との武力衝突が激化し、翌年の独裁体制移行へと向かう破局前夜の時代です。労働者のための新しい住宅建設という理想主義的なプロジェクトが、現実の荒波の中で揺らいでいた時期でもあります。

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