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Portrait d'Igor Stravinsky イーゴリ・ストラヴィンスキーの肖像

1920年

新古典主義肖像画
Portrait d'Igor Stravinsky

画像: Image quote: Pablo Picasso, Igor Stravinsky (1920) Source: Wikipedia

寸法
62.4 × 48.5 cm
技法・素材
灰色紙にグラファイト鉛筆および木炭
所蔵
パリ国立ピカソ美術館

三次元の空間を二次元の平面に写し取る伝統的な手法を終わらせ、近代美術のあり方を根本から再定義したスペイン出身の画家。

✦ 見どころ(技法・色彩)

灰色紙に鉛筆と木炭で描かれています。過度な陰影を抑え、輪郭線の強弱とわずかな平行線だけで立体感を表現する純粋な線描が特徴です。一見すると忠実な写実デッサンに見えますが、組まれた手や膝が実際の比率よりも大きく描かれており、画面に圧倒的な重量感を与えています。単なる写実ではなく、意図的な歪みによって画面空間に均衡をもたらすピカソ独自の技法が光ります。

✦ この絵の舞台

1920年5月24日、パリのラ・ボエシー通り23番地にあったピカソのアトリエ兼自宅が舞台です。下階は妻オルガの趣味を反映した洗練された生活空間でしたが、上階のアトリエは未完成のキャンバスやアフリカ彫刻、楽器などが足の踏み場もなく置かれたカオス的な空間でした。バレエ《プルチネルラ》の初演直後、熱気冷めやらぬ中でストラヴィンスキーがこのアトリエを訪れた際に描かれました。

✦ 時代背景

第一次世界大戦後のヨーロッパ文化界に広がった「秩序への回帰」という潮流が背景にあります。戦前の過激な破壊衝動への反動として、古典的な調和や伝統的技法の再評価が求められました。ピカソは精密な線描による新古典主義の絵画へ、ストラヴィンスキーは古典派の様式を再構築する新古典主義音楽へと移行しており、二人の美学が戦後の時代精神の中で同期していました。

✦ 鑑賞のための問い

極限まで削ぎ落とされた線の中で、あなたが一番力強さを感じるのはどの部分ですか?

丸眼鏡をかけたスーツ姿の男性。
両手を前で固く組み、静かに座っています。

この絵について、ある有名な逸話が語られることがあります。

「国境の検問所で、軍事要塞の秘密構造図と間違えられた」
憲兵に疑われ、没収されそうになったというものです。

でも実は、それはこの絵のエピソードではありません。

事件が起きたのは1917年のこと。
ピカソが描いた、まったく別の肖像画での出来事でした。
現代でも多くの解説で、この絵の逸話として誤って語られ続けています。

では、この絵はいつ、どのようにして生まれたのでしょうか。

1920年5月24日、パリ。
ラ・ボエシー通り23番地にあるピカソのアトリエ。
そこに、作曲家のイーゴリ・ストラヴィンスキーが訪ねてきました。

二人が初めて出会ったのは、3年前のイタリアでのこと。
視覚芸術と音楽。
領域は違えど、共に革新を目指す二人は瞬く間に意気投合しました。

そして1920年5月中旬。
パリ・オペラ座でバレエ《プルチネルラ》が初演されます。
ストラヴィンスキーが音楽を、ピカソが美術を手がけた歴史的な舞台です。

連日満員となる熱気。
興奮冷めやらぬ中での、アトリエ訪問でした。

当時のピカソの自宅は、二つの顔を持っていました。
下階は、妻の趣味を反映した洗練された生活空間。
しかし上階のアトリエは違いました。

未完成のキャンバス、アフリカ彫刻、楽器、書類。
足の踏み場もないほど乱雑に置かれた、カオス的な空間です。

第一次世界大戦がもたらした、未曾有の破壊。
戦後のヨーロッパは「秩序への回帰」を求めていました。
過激な破壊衝動から離れ、古典的な調和を取り戻そうとする動きです。

ストラヴィンスキーは、古典派の様式を再構築する音楽へ。
ピカソもまた、精密な線描による表現へと向かっていました。
時代精神に同期した二人の天才が、ここで交差したのです。

混沌としたアトリエの中で、ピカソは友人の姿を一気に描き上げます。

誰かに注文されたわけではありません。
お金のためでもない。

二人は日常的に、自筆の素描や譜面を交換し合っていました。
ストラヴィンスキーからは自筆の楽譜が贈られ、ピカソは肖像画で応える。
それは、最前線を走る者同士の、親密な対話でした。

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