Madame Moitessier モワテシエ夫人像
1856年
新古典主義肖像画

- 寸法
- 120.0 cm × 92.1 cm
- 技法・素材
- 油彩・カンヴァス
- 所蔵
- ロンドン・ナショナル・ギャラリー
近代市民社会の富裕な夫人を、古代の天上の女神へと神格化し、現代のモードの中に永遠の古典美を打ち立てること。
✦ 見どころ(技法・色彩)
画面右側の鏡に注目してください。正面を向く夫人の姿に対し、鏡の中には完璧な真横の顔(プロフィール)が映し出されています。光学的にはあり得ない角度ですが、画家が意図的に遠近法を歪めて作り出した幾何学的な構成です。また、夫人の右手のポーズは、人差し指がこめかみに触れることで、鑑賞者の視線を磁器のように滑らかな顔へと誘導する強力な視線誘導ラインを形成しています。
✦ この絵の舞台
パリ8区アンジュー通り42番地に位置していたモワテシエ邸の私的サロン。第二帝政期パリの最上流ブルジョワジーが集う高級住宅街であり、室内には最新のフランス家具、オリエンタル磁器、赤いダマスク織が配置されていました。フォーマルなイブニング・ドレスの着用と室内照明の反射から、夕刻から夜間にかけての社交の情景が描かれています。
✦ 時代背景
1856年はナポレオン3世によるフランス第二帝政の絶頂期にあたります。産業革命と金融業の飛躍的発展により新興ブルジョワジーが莫大な財を築き、社交界の主役となっていました。また、フランスのリヨンは絹織物産業の世界的大拠点であり、1855年前後に「クリノリン」が普及したことで、女性のドレスは巨大なドーム状となりました。

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