
- 寸法
- 72 × 62 cm
- 技法・素材
- キャンバスに油彩
- 所蔵
- アントワープ王立美術館
Two Springs
1910年
象徴主義
✦ 見どころ(技法・色彩)
赤と黒の強烈な平面対比が、画面を引き締めています。初期フランドル派の巨匠ハンス・メムリンクやヤン・ファン・エイクから、静謐な佇まいや明瞭な輪郭線、窓外の遠景描写を取り入れています。また、農村の少女の極めて細い首や衣服の胸元の切り込み、その姿勢は、イタリア・ルネサンスの巨匠ピエロ・デラ・フランチェスカの『出産の聖母』から直接的な影響を受けており、古典美術の精神性が重ね合わされています。
✦ この絵の舞台
画面の右側には、赤い服を着た素朴な農村の少女が描かれています。彼女の背後、画面の右上隅には、画家が暮らしたシント=マールテンス=ラーテムの農村風景が「のぞき窓」のように小さく見通せます。一方、左側には巨大な赤い羽飾りと黒いヴェールのついた帽子で顔を覆い隠した、19世紀末の洗練された都市の女性が配置され、農村と都市という二つの異なる世界が対比的に構成されています。
✦ 時代背景
1900年、病弱だった画家はゲントの都市生活を離れ、農村シント=マールテンス=ラーテムへ移住しました。彼はそこで素朴な農民生活とカトリック信仰に深く傾倒し、精神的な充足を求めます。1910年当時も、大地の生を真摯に生きる人々への思慕は強く残っていました。本作は、都市生活の虚飾に対する農村の道徳的・宗教的優位を画面上で主張しようとした、画家の初期象徴主義を代表する作品です。

出典・参考資料
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