
- 寸法
- 39.4 × 26.7 cm
- 技法・素材
- 紙本墨画淡彩
- 所蔵
- メトロポリタン美術館
Album of Sketches by Katsushika Hokusai and His Disciples Pl.44 (19th century)
ジャポニスム江戸時代
✦ 見どころ(技法・色彩)
最大の見どころは、墨の水分を極限まで抑えて描く「渇筆(かつぴつ)」という技法です。筆を紙に擦りつけるようにして生み出されたかすれた線が、雀の羽毛の柔らかさや風を孕む質感をリアルに表現しています。また、全体を濃く塗りつぶすことはせず、墨の濃淡をベースにしながら、喉元や羽の一部に最小限の淡い色彩を乗せることで、鳥たちの瑞々しい生命力を際立たせています。
✦ この絵の舞台
この絵には、特定の場所を示す地面や空などの背景が一切描かれていません。雀たちは、意図的に残された純粋な紙の余白の中に配置されています。実在の空間から対象を切り離し、何もない空間に「宙吊り」にするこの手法は、鳥の生命力や動きそのものに焦点を当てるためのものです。同時に、弟子たちが絵手本として他の紙に写し取りやすくするための、実用的な工夫でもありました。
✦ 時代背景
19世紀前半の江戸時代後期、老中・水野忠邦による「天保の改革」が断行されました。庶民の娯楽には厳しい統制が敷かれ、浮世絵の主流だった華やかな役者絵や美人画は贅沢品として弾圧されます。検閲が強化される中、北斎をはじめとする絵師たちは生き残りをかけ、お咎めを受けにくい花鳥画や風景画、そして弟子を育てるための「絵手本」の制作へと活動の主軸を移していきました。

出典・参考資料
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