Cliff Walk at Pourville プールヴィルの断崖の散歩道
1882年

- 寸法
- 66.5 × 82.3 cm
- 技法・素材
- キャンバスに油彩
- 所蔵
- シカゴ美術館
✦ 見どころ(技法・色彩)
崖の上の草木が夏の強い海風によって激しくそよぐ様子が、湾曲した短い筆跡を並べることで表現されています。この風の動きは、女性たちの衣服の揺れや、白波を立てる海面のうねりと同じ筆使いと色調で描かれており、人間と風景が一体となっています。また、左下から右へと突き出す断崖の斜め線が画面に動きを与えており、日本の浮世絵に見られるような平面的で大胆な空間の切り取り方の影響も感じられます。
✦ この絵の舞台
フランス・ノルマンディー地方、ディエップの西に隣接する小さな漁村プールヴィル=シュル=メールの断崖が舞台です。具体的には「ヴァル・サン=ニコラ」と呼ばれる切り立つ崖の頂から、眼下に広がるイギリス海峡を見下ろす俯瞰的な視点で描かれています。当時のフランスは長期経済不況にありましたが、画面には夏の強い海風に吹かれる草木や、海面に浮かぶレジャー用のヨットなど、穏やかでダイナミックな自然の風景が広がっています。
✦ 時代背景
1882年当時、モネは私生活と仕事の両面で過酷な状況にありました。1879年に妻カミーユを亡くし、アリス・オシュデとその子供たちとの共同生活を始めていましたが、経済的にも不安定でした。さらに、第7回印象派展を控える中でグループ内部の対立にも幻滅していました。人間関係から逃れるように一人で訪れたプールヴィルの自然に魅了されたモネは、同年夏に家族を連れて再訪し、この地で多くの作品を制作しました。
夏の強い海風が吹き抜ける、ノルマンディーの切り立った断崖。
眼下に広がるイギリス海峡を見つめる二人の女性。
そのドレスが、風に激しく揺れています。
海面にはヨットが浮かび、明るい陽光が降り注ぐこの作品。
一瞬の光と風の動きをカンヴァスに素早く定着させる。
印象派ならではの、鮮やかなスナップショットのように見えます。
画家が戸外にキャンバスを立てた。
そして目の前で起きている出来事を、そのまま写し取ったのだと思うでしょう。
でも実は、この絵は現実の風景をありのままに切り取ったものではありません。
近年の赤外線やX線による科学調査によって、ある事実が判明しました。
モネがこの画面に、大胆かつ計算し尽くされた修正を加えていたことが分かったのです。
この絵が描かれた1882年当時。
モネは私生活と仕事の両面で、過酷なプレッシャーに直面していました。
1879年に最愛の妻カミーユが死去。
その後、彼はアリス・オシュデとその6人の子供たちと共同生活を始めます。
しかし、その関係は法的にも経済的にも非常に不安定なものでした。
さらに、フランスを襲っていた長期経済不況によって絵画の売れ行きは落ち込みます。
印象派グループ内部の深刻な対立にも、彼は幻滅していました。
逃げ出したかった。
この続き:約920文字

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