
1910年代のウィーンで、背景を排した空白の中に極端に歪んだ肉体を描き出し、人間の実存や深層心理を解剖した表現主義の画家。
Life生涯
エゴン・シーレは1890年、下オーストリアのトゥルン・アン・デア・ドナウで駅長の息子として生まれた。幼い頃から鉄道のスケッチに並外れた才能を示し、この地で強迫観念的に機関車や線路を描き続けた経験が彼の視覚的な原風景となる。しかし14歳の時、父が梅毒による進行麻痺の末に狂気の中で死去し、一家は中流の地位から転落する。この父の死の影は、後の作品に現れる死神のような輪郭として、彼の芸術的ヴィジョンを脅かし続けることになった。
16歳でウィーン美術アカデミーに入学した彼は、厳格な古典主義や写実主義の教育を受ける。翌年にはウィーン分離派の巨匠グスタフ・クリムトのアトリエを訪ね、その才能を絶賛された。クリムトからはドローイングの交換やモデルの斡旋といった支援を受け、初期の作品には金や銀の金属粉末を用いた優雅な装飾性が取り入れられている。しかし、アカデミーの保守的な体制に不満を募らせた彼は、19歳で自主退学を選択し、同級生らと新たな芸術集団を立ち上げた。
独立後の彼は、クリムトから受け継いだ平面的な装飾美を意図的に放棄していく。従来の肖像画が人物を背景の中に調和させていたのに対し、彼は背景の文脈を徹底的に排除した。何もない画面の中に、震えるようなトゲだらけの線で、骨格が剥き出しになった痩せ細った身体を描き出したのである。特に自画像においては、自らの肉体を純粋な記録としてではなく、実存の不安を解剖するための劇場的な実験場として扱った。首を不自然な角度に曲げ、挑発的でありながら脆さを感じさせる瞳でこちらを凝視する姿は、社会的な欺瞞を剥ぎ取った後に残る人間の真実を突きつけている。
21歳の時、彼は17歳のヴァリ・ノイツィルと同棲を始め、母の出生地であるボヘミアの歴史的都市クルマウへ移住する。古びて崩れかけた家々の壁や屈曲する川の風景に、彼は死へと向かう人間の肉体のメタファーを見出した。しかし、未婚の同棲や地元の子供をヌードモデルにしたことが住民の怒りを買い、数ヶ月で退去を余儀なくされる。次に移り住んだノイレンバッハでも、家出少女を一時保護したことから逮捕され、24日間にわたり独房に拘留された。最終的に誘拐や虐待は無罪となったものの、子供の目に触れる場所に露出度の高い絵を放置した罪で有罪判決を受ける。この因習的な社会との衝突は、彼に迫害される芸術家としての悲劇的な主体性を植え付けた。
長年寄り添ったヴァリと冷酷に別れ、アトリエの向かいに住む中流階級のエディト・ハルムスと結婚したのは25歳の時である。結婚の数日後には第一次世界大戦の兵役で陸軍に召集されるが、上官の理解を得て軍隊生活の中でも多数の肖像画を描き留めた。この時期を経て、彼の関心は自己愛的な内省から他者の生命や普遍的な運命へと移り変わる。鋭く角張っていた輪郭線は次第に丸みを帯び、描かれる肉体は確固たる物質的なボリュームと三次元的な彫刻性を獲得していった。
1918年3月、第49回ウィーン分離派展で中央ホールでの個展を任されると、出品作がほぼ完売するという商業的な成功を収める。富裕層からの注文が殺到し、経済的に最も安定した時期を迎えた。彼は暗い室内でしゃがむ裸体の自分自身と、足元に安らぐ妻エディト、そして彼女の胎内にいるまだ見ぬ子供の姿をキャンバスに描き始める。過激な葛藤を乗り越え、調和のある家庭的な未来像を手に入れたはずだった。しかしその年の秋、猛威を振るったスペイン風邪により妊娠6ヶ月の妻が命を落とし、わずか3日後には彼自身も28歳の若さでこの世を去る。彼が最後に描いていた家族の肖像は永遠に未完のまま遺され、現在はウィーンのベルヴェデーレ宮殿オーストリア絵画館に所蔵されている。
Timeline 年表
1890
下オーストリアのトゥルン・アン・デア・ドナウで誕生
1904
父アドルフが梅毒による進行麻痺の末に死去
1906
ウィーン美術アカデミーに入学
1907
グスタフ・クリムトのアトリエを訪ね、支援を受け始める
1909
アカデミーを自主退学し、ネオクンストグルッペを創設
1910
独自の素描スタイルを確立し、裸体自画像の制作を本格化
1911
ヴァリ・ノイツィルと同棲を開始し、クルマウへ移住
1912
ノイレンバッハで逮捕され、公道徳違背罪で有罪判決を受ける
1915
ヴァリと別れエディト・ハルムスと結婚、陸軍に召集される
1918
第49回ウィーン分離派展で個展を任され、出品作がほぼ完売
1918
スペイン風邪により妻エディトが死去し、3日後に自身も死去
Works 作品

Reclining Woman

Mourning Woman

House wall (window)

憂い
Sorrow (Kümmernis)
Premium 死と乙女
Death and girl

アルトゥール・レスラーの肖像
Portrait of Arthur Roessler (Bildnis Arthur Roessler)

Portrait Of Wally Neuzil

Levitation (The Blind II)

家々の並び II(島都市)
Crescent of Houses II

幾何学模様のローブをまとった立ち姿の裸婦
Standing Nude with a Patterned Robe

Self-Portrait (Selbstbildnis)
Premium パリス・フォン・ギュータースローの肖像
Portrait of Paris von Gütersloh (Bildnis Paris von Gütersloh)







