美術館で、一枚の絵の前に立ちどまる。
静かなはずの展示室で、なぜか音楽が聞こえてくるような気がすることはないでしょうか?
あるいはその逆で、ある曲を聴いているうちに、まぶたの裏に風景が広がっていく。
夕暮れの海、雨に濡れた街、揺れる木々。音のなかに、たしかに「色」が見える瞬間があります。
絵画と音楽。目で観る芸術と、耳で聴く芸術。
まったく別のものに思えるふたつは、実は何百年ものあいだ、静かに響き合ってきました。
画家が「音楽」を描いたとき

絵のなかに音楽を描き込もうとした画家は、たくさんいます。
たとえば、ピアノを弾く人を描いた絵画。鍵盤にそっと置かれた指、うつむいた横顔、部屋に満ちる午後の光。そこには音は流れていないのに、なぜか旋律が聞こえてくるようです。
ルノワールは、少女たちがピアノに向かう穏やかな時間を描きました。
ドガは、演奏会やリハーサルの舞台裏を、まるでその場の空気ごと切り取るように描きました。
彼らが惹かれたのは、音そのものではなく、音楽が生まれる「瞬間の空気」だったのかもしれません。
音を描くことはできない。
けれど、音楽が流れているその場の静けさや高まりなら、絵に閉じ込めることができる。
画家たちはそう信じて、筆を執ったのでしょう。
音楽家が「絵」を音にしたとき
反対に、絵や風景から音楽を生み出した作曲家もいます。
ムソルグスキーという作曲家は、亡くなった友人の遺作展を訪れたあと、「展覧会の絵」という作品を書きました。
一枚一枚の絵の前を歩きながら、その絵が語りかけてくる物語を音に変えていったのです。
絵から音楽が生まれた、めずらしい例です。
























