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Morning in the Riesengebirge リーゼンゲビルゲの朝

1810年

Morning in the Riesengebirge

画像: Wikimedia Commons / Public Domain

寸法
縦 108 cm × 横 170 cm
技法・素材
油彩・カンヴァス
所蔵
ベルリン旧国立美術館

18世紀末から19世紀前半にかけて活動し、下位のジャンルとされていた風景画を人間の内面精神を映し出す芸術へと変革したドイツの画家。

ナポレオン支配下の絶望と王妃ルイーゼの死に対する深い哀悼を抱えつつ、祖国ドイツの精神的・政治的な復活と、個人の魂の救済への祈りを込めた。

✦ 見どころ(技法・色彩)

画面を上下に二分する極端な水平線と、それを唯一突き破る十字架の垂直線の対比。また、筆の跡を残さない「ラスール(薄塗り)」技法によって描かれた、赤橙色の朝日と青灰色の朝霧のグラデーション。奥へ行くほど山々が淡く溶け込む空気遠近法が、無限の奥行きを生み出している。

✦ この絵の舞台

ボヘミア(現在のチェコ共和国)とシレジア(現在のポーランド)の国境沿いに広がる巨人山脈(リーゼンゲビルゲ)。ただし特定の場所の写生ではなく、最高峰シュネーコッペなどの複数のスケッチをアトリエで再構成した「合成景観」である。

✦ 時代背景

1810〜1811年。ナポレオン戦争下でドイツ諸邦がフランスの支配下にあり、プロイセンが領土の半分を失っていた屈辱の時代。1810年7月には愛国心の象徴であったプロイセン王妃ルイーゼが急死し、国民の間に深い哀悼と反ナポレオン的なナショナリズムが高まっていた。

✦ 鑑賞のための問い

絶望の淵からあなたを引き上げてくれる存在があるとすれば、それは誰、あるいは何でしょうか?

冷たい朝霧が深い谷間を白く埋め尽くし、果てしなく連なる山々の稜線が、夜明けの光の中で淡い青紫色に染まっていく。その静寂に包まれた広大なパノラマのなか、手前に鋭く突き出た岩峰で、一人の男が険しい岩肌をよじ登ろうと必死に手を伸ばしている。

絶望の淵から見上げた一筋の光

1810年の夏、画家カスパル・ダーヴィト・フリードリヒの心は、祖国を覆う重い暗雲と同じように深く沈み込んでいた。当時のドイツ諸邦は、ナポレオン・ボナパルト率いるフランス帝国の圧倒的な軍事力によって蹂躙され、屈辱的な支配下にあった。フリードリヒが愛するプロイセンもまた、戦いに敗れて領土の半分を失い、国家の存亡すら危ぶまれる絶望的な状況に陥っていた。

さらに追い打ちをかけるように、悲劇が国を襲う。人々の希望の星であり、反ナポレオンの愛国心の象徴として敬愛されていた若きプロイセン王妃ルイーゼが、34歳という若さで急死したのだ。この悲報は、ドイツ国民の間に深い哀悼の念と、行き場のない怒りを巻き起こした。熱烈な愛国主義者であったフリードリヒもまた、深い喪失感に打ちひしがれ、自らの無力さに苛まれていた。

息苦しい都市の空気と、政治的な絶望から逃れるように、彼は11歳年下の画家仲間であるゲオルク・フリードリヒ・ケルスティングとともに、ドレスデンを旅立った。向かった先は、ボヘミアとシレジアの国境にそびえ立つ巨人山脈(リーゼンゲビルゲ)である。

当時のドイツ・ロマン派の思想家、例えば神学者フリードリヒ・シュライアマハーは「宗教とは、宇宙に対する直観と感情である」と説いていた。教会という建物の中に閉じこもるのではなく、無限に広がる自然の中に身を置き、その崇高さを全身で感じることこそが、神と直接つながる道だと考えられていたのだ。フリードリヒもまた、その思想に深く共鳴していた。

彼らは重い足取りで険しい山道を登り、冷たい風に吹かれながら最高峰シュネーコッペの頂を目指した。都市の文明から遠く離れた厳しい自然の中で、フリードリヒはひたすらにスケッチブックに鉛筆を走らせた。岩の質感、風に揺れる樹木、そして雲海に浮かぶ山々のシルエット。大自然の圧倒的なスケールの前に立つとき、人間の存在はいかに小さく儚いものか。しかし同時に、その無限の広がりの中に身を置くことで、彼の傷ついた魂は少しずつ何かを取り戻そうとしていた。

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  • ・白いドレスの女性が象徴する救済の正体
  • ・朝日の光に込められた祖国復活への祈り
  • ・賛否両論を巻き起こした謎の人物描写

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