Monsieur Coqueret (Father)
1880年
印象派肖像画
✦ 見どころ(技法・色彩)
柔らかなグレーとブルーを基調とする抑制された色調が特徴です。幅の広い力強い筆遣いで、衣服の重厚な質感や口髭、思索的な表情を描き出しています。
✦ この絵の舞台
1880年、モネが居住していたセーヌ川沿いの小さな町ヴェトゥイユのアパートメント、もしくは注文主コクレの所有地の一角が舞台です。
✦ 時代背景
1880年当時、モネは印象派グループから離れ、保守的なサロンへの出品に回帰するなど、経済的危機を脱するための生存戦略を模索していました。
グレーとブルーを基調とした、落ち着いた色合い。
立派な口髭を蓄えた初老の男性が、思索的な表情を浮かべています。
1880年。
クロード・モネは、人生のどん底にいました。
前年の9月、最愛の妻カミーユが病死。
モネは幼い2人の子供を抱え、ヴェトゥイユの町で路頭に迷う寸前でした。
風景画の探求を進めたい。
しかし、絵の具を買う金すらありません。
生きるために、彼は筆を執りました。
地元の実業家、ナルシス・コクレからの依頼。
コクレはヴェトゥイユ近郊にコンパス製造工場を持つ、敏腕な実業家でした。
彼からの注文は、自分の父親を描くという肖像画でした。
コクレは、モネの経済的な苦境を十分に理解していました。
風景画を買い取るだけでなく、父親と息子の肖像画を重ねて依頼する。
それは、若き画家への確かな救いの手でした。

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