果物籠を持つ少女
1863年
柔らかな陽光が差し込む古典的な回廊。 豊潤な果物が入った籠を頭に載せ、静かに歩みを進める少女。 白く透き通るような肌と、光の加減で金にも赤にも見える美しい髪が、彼女の彫刻のような横顔を引き立てている。
タイトルの「エウカリス」とは、ギリシャ神話の世界を舞台にした小説の登場人物。 島に漂着した青年と激しい恋に落ちるものの、彼の「公的な義務」のために引き裂かれ、置き去りにされてしまう悲恋のニンフ(精霊)である。
しかし実は、この絵から「別れの悲哀」や「劇的なドラマ」は一切感じられない。
本来であれば、愛する者を失う絶望や道徳的な教訓がドラマチックに描かれるはずの主題。 しかし画家レイトンは、そうした物語の重みをキャンバスから意図的にすべて消し去ってしまったのだ。 さらに、この完璧に理想化された美しい女神のモデルを務めたのは、なんと彼の実の妹だったと言われている。
当時のイギリス美術界では、絵画とは「教訓や物語を語るもの」であるのが常識だった。 そのため、「ただ美しいだけの絵」を描いた彼は、古い頭を持つ重鎮の画家たちから「不健全だ」と激しい非難を浴びることになる。
それでも彼は決して屈することなく、純粋な「色彩とフォルムの調和」だけを追い求めた。 引き裂かれる恋の痛みも、重苦しい教訓もすべて取り払い、彼がキャンバスの上にそっと閉じ込めたのは、決して色褪せることのない「永遠の美」そのものだった。
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ヴィクトリア朝の画壇に君臨したイギリスの巨匠にして彫刻家。 王立芸術院(ロイヤル・アカデミー)の会長を長年務め、イギリスの画家として史上唯一、貴族(男爵)の称号…












