Ausfahrt zum Fischfang
1951年
海表現主義
✦ 見どころ(技法・色彩)
本作には水彩画版と木版画版が存在します。水彩版では、水が紙の上で自然に滲む効果を活かし、寒色系のブルーやグリーンを基調とした透明な色面と、鮮烈な原色が対比されています。波を切り裂く船体と風に対峙する漁師たちの肉体がダイナミックな斜線構図に統合され、自然の猛威に挑む生命力を伝えています。
✦ この絵の舞台
本作の舞台は、荒れ狂うバルト海の波涛と、そこへ漕ぎ出す漁師たちの姿です。ペヒシュタインにとってバルト海沿岸のレバやローヴェは、ナチスに活動を禁じられるまで毎夏を過ごした精神的故郷でした。しかし1951年当時は冷戦下で自由に訪れることができず、脳裏で再構成された「失われた楽園」としての風景が描かれています。
✦ 時代背景
1951年、70歳を迎えたペヒシュタインは、戦後の西ドイツ芸術界で「表現主義の生ける伝説」として復権の最中にありました。ナチス政権下で「退廃芸術家」として弾圧された冬の時代を乗り越え、全体主義の抑圧から解放された画家が、自らの探求の原点へと回帰した戦後の集大成となる時期です。

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