La Conversation 会話

夜景
La Conversation
寸法
55.9 × 39.3 cm
技法・素材
油彩、カンヴァス
所蔵
個人蔵
ジャン・ベロー

フランス

ジャン・ベローJean Béraud

1849 – 1935

19世紀末から20世紀初頭のフランスにおいて、目まぐるしく変化する大通りの人間模様をスナップショットのように切り取った芸術家である。

✦ 見どころ(技法・色彩)

女性が着ているイブニングドレスの、鮮烈な「矢車菊の青」に注目してください。紳士の黒いタキシードや、白と金で統一された室内の色彩の中で、この青がひときわ目を引きます。また、画面を二分する大きな鏡が、女性の背中側のシルエットを映し出し、平坦な室内に奥行きを与えています。写真のように細密なリアリズムと、流れるような筆遣いが両立した見事な描写です。

✦ この絵の舞台

19世紀末のパリに実在した高級アパルトマンのサロンです。白と金箔の壁面装飾は、現在のフランス国家歴史博物館にあるスビーズ館の内装に似ています。オスマン男爵の都市改造によって誕生した大通りに面しており、開け放たれたバルコニーからは、ガス灯が輝く夜のパリの街並みや行き交う馬車が見えます。私的な室内と公共の街路が交差する特権的な空間です。

✦ 時代背景

19世紀末のパリは、大規模な都市改造を経て近代都市へと生まれ変わる過渡期でした。ガス灯や電気灯の普及により、人々の活動時間は夜間へと劇的に拡大します。アパルトマンのバルコニーは、都市の景観を楽しむ特権的な場所であると同時に、家庭のプライバシーが外の世界へと漏れ出す曖昧な境界線でもありました。常に他人の視線を意識する、近代特有の心理が生まれていた時代です。

✦ 鑑賞のための問い

半分開かれた扇子を握る女性は、この後どんな言葉を口にすると思いますか?

豪奢なサロンで、青いドレスの女性がうつむいています。
鮮やかな矢車菊の青。
幾重ものフリルがあしらわれた、最新のドレスです。

目の前の紳士は黒のタキシード姿。
椅子の背を強く掴み、身を乗り出している。
二人の間に流れる、張り詰めた沈黙。

描いたのは、ジャン・ベロー。
彼は最初から画家だったわけではありません。

ロシアで生まれ、父の死後にパリへ移住。
青年になった彼は、弁護士を目指して法学を学んでいました。

しかし、1870年。
普仏戦争が勃発します。

パリは包囲されました。
ベローは都市を防衛する機動部隊に志願し、従軍します。
戦火の中で、彼は何を見たのか。

終戦後。
彼は法律の道を捨てました。
芸術の世界へ飛び込んだのです。

彼が選んだのは、パリの街そのものを描くことでした。
マネやドガと同じカフェに通い、都市の移り変わりを見つめる。
ベローはパリを「恋人」と呼びました。
街のあらゆる片隅を歩き回る、熱心な観察者。

時には馬車を何時間も雇い切りました。
その車内から、街行く人々や窓辺の情景を素早くスケッチする。
そんな奇妙な習慣を持つほど、彼は都市に魅了されていました。

彼は社交界にも深く入り込みます。
作家マルセル・プルーストが決闘した際、立会人を務めたこともありました。
華やかな夜会。
そこで交わされる愛の駆け引きや、心理的な偽装。
彼はそのすべてを、静かに観察していたのです。

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