Mädchen am Tisch mit Vase
1930年
✦ 見どころ(技法・色彩)
空間の安定感を巧みに揺さぶる二つの仕掛けが施されています。一つは、テーブルや人物、花束に当たる光と影の方向が物理的に一致していないこと。これが観る者の無意識に奇妙な動揺を与えます。もう一つは、少女の肩や花束の輪郭を包む、不規則で幅の広い光の縁取りです。これにより、対象はしっかりとした現実感を持ちながらも、幻影のように浮遊して見えます。
✦ この絵の舞台
前景に斜めに傾くテーブル板が配置され、鑑賞者のいる現実空間と、奥に広がる非現実的な精神空間とを厳格に分けています。テーブルの左側には、薄い白い下着姿で右肩のストラップを滑らせた少女が座り、右手に頭を預けるメランコリアのポーズをとっています。右半分には、黒いガラス瓶に活けられた白いライラックの花束が溢れんばかりに描かれています。
✦ 時代背景
1930年は、前年のウォール街大暴落に端を発する世界大恐慌がドイツ全土を直撃した年です。失業者が街に溢れ、ワイマール共和国の崩壊と極右政党であるナチス党の躍進が確実視されるなど、社会全体が破局へと向かう序曲の時代でした。画家自身も妻との別居という私生活の孤独を抱えており、本作の少女の閉塞感は、間もなく崩壊を迎える知識人層の心理的危機を捉えています。

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