Kämpfe – Qualen der Liebe
1915年
表現主義
✦ 見どころ(技法・色彩)
切り裂くような鋭利なエッジを持った、表現主義木版画の最高峰です。2つの木版ブロックを用いて摺られており、フラットな空間処理と荒々しいコントラストが特徴です。キルヒナー自身が手彩色を施した希少なエディションも存在し、そこには一縷の光を思わせる黄色が配置されています。
✦ この絵の舞台
アデルベルト・フォン・シャミッソの小説『ペーター・シュレミールの奇妙な物語』の視覚的解釈です。主人公が無限の富と引き換えに自身の影を売り渡し、社会から忌み嫌われ、恋人との愛も破綻して精神的に追い詰められる心理的葛藤の領域が描かれています。画面左下には失楽園を象徴する蛇のモチーフが刻まれています。
✦ 時代背景
1915年、第一次世界大戦のさなかに制作されました。キルヒナーは志願兵としてドイツ帝国軍に入隊したものの、非人間的な訓練と戦争への恐怖から急激に精神の平衡を失い、精神病院に収容されました。個人の自律性を完全に奪われ、実存的な自己消失の恐怖に直面していた、画家の過酷な精神的苦闘の時期にあたります。

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