The Abduction of the Sabine Women サビニの女たちの略奪

1633年

悲劇
The Abduction of the Sabine Women

画像: The Metropolitan Museum of Art / CC0

寸法
縦 154.6 cm × 横 209.9 cm
技法・素材
カンヴァスに油彩
所蔵
メトロポリタン美術館

バロック様式の感情的な激動に対抗し、劇的な悲劇の瞬間を幾何学的遠近法と古代の比例論によって抑制し、理性的で完璧な古典主義的秩序へと昇華させること。

✦ 見どころ(技法・色彩)

画面左上の高台で直立するロームルスの静的な「垂直線」と、眼下の群衆が形成する激しい「対角線」や「らせん状の動き」が強いコントラストを生んでいます。また、ロームルスの鮮烈な赤、逃げ惑う女性たちの群青色、戦士の黄金色という原色が緻密に配置され、激しい運動感の中に調和した色彩的リズムを創出しています。消失点を画面中央後方に設定した厳密な直線遠近法が、手前のカオスを視覚的に押さえつけている点にも注目してください。

✦ この絵の舞台

古代ローマのカピトリーノの丘の麓、あるいは後のフォーラム・ロマーノとなる開かれた広場。背景には、16世紀の建築家セルリオの理論に基づく重厚な「トスカーナ・ドリア式」オーダーの神殿やポルティコがそびえ、建設中の足場が残されています。これは誕生したばかりのローマが、混沌から新たな秩序へと移行する過渡期にあることを示しています。

✦ 時代背景

1630年代のヨーロッパは三十年戦争の混乱期にあり、国家の主権や秩序の樹立が問われていた時代でした。フランス絶対王政の確立を目指すリシュリュー枢機卿にとって、この「秩序樹立のための不可避な暴力」という古代の説話は、強固な中央集権政治を正当化する「国家理性」の思想的寓意として受容される背景がありました。

✦ 鑑賞のための問い

高台の指導者と眼下の群衆。あなたならどちらの視点に立って、この歴史的な惨劇を見つめますか?

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