Pieta ピエタ
1876年

- 寸法
- 222.9 × 149.2 cm
- 技法・素材
- キャンバスに油彩
- 所蔵
- 個人蔵
✦ 見どころ(技法・色彩)
極端な明暗対比が特徴です。聖母マリアの漆黒のマントに対し、キリストの遺体は発光するような白い輝きを放っています。背後の9人の天使たちは、赤から紫へと変化する「約束の虹」のグラデーションを構成する衣をまとい、希望と魂の救済を象徴しています。
✦ この絵の舞台
本作の舞台は、キリストが磔刑に処された直後のゴルゴタの丘のふもとを思わせる、暗く切り立った岩場です。手前には茨の冠や鮮血が染み込んだ白い布、純潔性を象徴する水差しが置かれています。劇的な死の瞬間を不変の悲劇へと昇華するための、象徴的な空間として構築されています。
✦ 時代背景
1870年代のフランス。ブグローは古典古代の調和とルネサンス期の古典主義を受け継ぎ、比類なき描写技術で国際的な名声を博していました。しかし、1875年に最愛の長男を病で失うという悲劇に見舞われます。本作は、その個人的な喪失体験を背景に制作されました。
暗く切り立った岩場。
漆黒のマントを羽織った女性が、青白い青年の亡骸を抱きかかえています。
周囲には、色とりどりの衣をまとった天使たちが集まり、嘆き悲しんでいます。
これは「ピエタ」。
キリストの磔刑の直後、聖母マリアが息子の死を悼む伝統的な宗教画です。
完璧な構図と滑らかな肌の描写。
だらりと垂れ下がったキリストの腕や、精緻に描かれた手足。
イタリアの巨匠ミケランジェロの彫刻から強い影響を受けています。
まさに古典的な美しさの極みと言えるでしょう。
卓越した短縮法の技術が、惜しみなく投入されています。
過度の感傷を排した、冷徹なまでの技巧。
一見すると、完璧で隙のない宗教画に見えます。
でも実は、この絵にはもうひとつの意味が隠されています。
これは、画家自身が我が子を失った、痛切な悲しみの記録なのです。
1875年7月19日。
ウィリアム・アドルフ・ブグローは、最愛の長男ジョルジュを病で失いました。
結核を伴う肺疾患でした。
当時、ジョルジュはわずか16歳。
息子の早すぎる死。
ブグローは精神的に壊滅的な打撃を受けます。
約6ヶ月間、深い深い、うつ状態に陥りました。
絵筆を握ることすらできなかったのです。
絶望の底。
しかし、彼は再び立ち上がります。
引き裂かれるような喪失の痛みを、自らの芸術で乗り越えるために。
亡き息子のための記念碑として、この絵の制作を決意しました。
スケッチブックに向かう日々。
無数の、怒りに満ちた痛々しいドローイングが繰り返されました。
そして、わずか2ヶ月という異常なスピードで描き上げました。
この巨大なキャンバスを。
1876年のパリ・サロンに出品するために。
この続き:約618文字

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